シーソーシークワサー【07 ライムライトラーメン】
キヨとカノジョが駅まで送りますと言ってくれたのだが、俺は断り、鹿児島港から駅まで歩くことにした。寝てばかりになるが、それまでに宿がみつかればそれでもいい。そこに泊まろう。
ちょうどキヨのラーメンの昔話をして、思い出したところだった。ふらっと1キロも歩けば、お腹が空くだろうし、夜に食べるにはラーメンがちょうどいい。
そんな事を東京の絢にラインしながら歩いていたら、確かザビエル公園の近くに美味いラーメン屋があったと返事があった。
レスポンスが早い。彼女は俺が必要とする時に、いつもそうしてくれる。それだけ、俺も頼ってしまっているのだろう。そんな彼女の働く姿は、店でしか見たことがないが、おそらく仕事ができる。何をしてもそつなくこなすし、その反面、器用貧乏というか、ナイチンゲール症候群というか、とにかく気が多いことが欠点でもあった。彼女の荷物は、多くて、いつもパンパンだった。
その分、俺にかけてくれるエネルギーもその微々たる一部に過ぎないのだろうか。そんな事を考える資格すらないのに、俺は考えてしまっていることに気がついていた。
ふらふらと風にあたりながら歩いていると、後ろから追いかけてきたキヨたちの車が通り過ぎずに止まった。「ほんとにいいんすか?乗っていかなくて」そう言ってくれるキヨの優しさを、「いいって、彼女と幸せに」と、優しさで返した。これが優しさなのかどうかも、今の俺にはよく分からない。
――じゃ、また。
ここから先は
2,034字
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?