箱入りバーガー
ビッグマックを選ばない。「バンズ・肉・バンズ・肉・バンズ」が、とても一口では頬張れないとか、そんな可愛らしく、しおらしい理由ではない。ハイプライスだから敬遠しているのでもない。
初めて食べたのはいつだっただろう。小学生の頃のお小遣いでは手が出せない逸品に、高校生くらいには食べてみたかもしれない。それから四十になるまで、何度かトライした。結果、それを選ばなくなった。
問題は、箱。箱なのだ。
そこに入れられたバーガーの状態にある。ふわっととバンズを守ってくれているはずの有難い箱なのに、食べるには、両手を使わざるを得ない。そこからバンズを丸ごと、素手で持っていくのに抵抗があるのだ。
メニュー写真のイメージ通りの厚みはそこにはなく、圧縮袋に入れてやや吸い上げた状態のようなコンパクトサイズではある。それでも、こぼさずにきれいに食べられた試しがない。
散らばるレタス。
垂れるソース。
食べる前から箱の中に落ちたそれらを見て、なんとも言えない気持ちになる。テイクアウトだからではない。箱が閉じられた瞬間に、具材はすでに外に出ている。
そんなわけで、私はダブルチーズバーガー一択である。真ん中のバンズがない「肉・チーズ・肉」、そこにケチャップ、まさしく禁断の味。紙に守られたそれを、こぼさないように剥きながら食べる。なんなのだろう、この紙一枚の安心感は。ナゲットは手づかみできるくせに、バーガーは両手を使うことなく食べたいという偏屈な私の欲望を満たす一品。
それでも季節ごとの期間限定商品のたまごを使ったアレや、チキンを揚げたアレ、いろんなものは食べたい。ああ、また吸い込まれるようにマックに入ってしまう。
久しぶりに、限定バーガーをテイクアウトした。
さあ、食べるぞと、紙袋を開けた時、箱が見えた。
ああ、落とし穴。
あなたは箱入りバーガーだったのね。覚悟して両手を構える。
久しぶりに、底の景色が見えた。
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