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シーソーシークワサー【24 隅っこバスの揺れ方】



↑前回までの【シーソーシークワサー】は??


【シーソーシークワサー 24 隅っこバスの揺れ方 】


 成田の空気が冷たい。顔にはピリッとした冬の空気が横切った。


 成田イコール東京と思っていた凡人は、ようやく、そこがネズミの国に近く、都心からは離れていることを知った。


 最後のタラップを降りてからは、地上の重さを感じたまま、バスに揺られる。「隅っこに住まわせていただいております」という謙虚なLCCは、とにかく出口までの距離も長かった。やっと機内の密から解放されたのも束の間、バスで再び密を味わう。


 この繰り返しが、凡人には拷問だった。


 島から出て解放されたいと思えば思うほど、どこにいっても囲われている中の自由でしかない。一瞬の解放を味わって、またギュウギュウ詰になることになれている人間たちの横顔は、どこか死んでいる。


 隣のBの席にいた女の子は、前のほうで彼氏と手を繋いだまま、スマホでもう次のTDLのページを手繰り出していた。凡人は、それができなかった。
 店にいた頃は、全体を俯瞰して捉えていたのに、いざ、スマホの中となると縦軸のみ。絢からのラインを手繰るだけで精一杯だった。


「成田と羽田では空気が違う。ちょっとの差だけど、ビジネスマンたちがいつも羽田に降りたがるのは、自由な時間を買っている自分に酔いたいからなのよ」


 いつか絢が連れてきた作家の先生がそう言っていたのを思い出した。
 「時間を買っている」という発想は、夜の仕事にも通ずるところがあった。お客さんたちは「春未の隣にいる時間」を買っていた。それが、指名料というもので、そこで勝つか負けるか場内指名争いが勃発する。そしてルックスでも、どうしても明暗が別れてしまう。だが、長く客になるかどうかは、そこではなかった。店全体の管理を任せられるようになってからは、その勝ち負けの判断をしなくなった。
 春未の立場が変わったのにも気づかず、理解できないと去っていった同期もたくさんいた。それでも、春未は店を守り続けていた。つい、この前までは……。

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ど田舎そだちど田舎、 ゆる!がんそロハス! わかやまきみの町からの、 定期エッセイです。 ベリーブ爺…

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