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パンクエストサタデー~牡牛座のきみの恋するpetit story~

きみの星座別 恋するpetit story

【 パンクエストサタデー 】

「土曜日にまとめて周ってみない?朝の開店時間にここで、モーニングはこの店で……」と説明し出したら、「そういうのは、ちょっと……」と、彼女は俯いた。
 土日にだけ開店する、山の上のパン屋がいくつもある不思議な町。そこにパンが大好きな彼女を、ドライブデートに誘おうと決意し、やっとOKを貰えたまでは良かったのだが、僕は、その次の彼女の返事に困惑していた。
何が悪かったのだろう。一日でコンプリートするには、土曜日。土曜日しかない。やっとデートに誘えたのだから、彼女が好きな場所に、パーフェクトなデートコースを提案したくて、僕は焦った。
「あっ、えーっと、そうだね。開店時間に現地だと、早起きしなきゃいけないもんね。うーん、だとすると……」
「あっ、そうじゃなくって」
彼女は笑い出した。僕はまた、見当はずれなことを言ってしまったのだろうか。
「一度に済ませちゃうと、もったいなくって。また今度も一緒に行きたくって」
 顔を赤らめた彼女は目を合わすとまた俯いた。勇気を出していたのは、僕だけじゃなかったみたいだ。次の土曜も、その次の休日も、今から楽しみだ。


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