シーソーシークワーサー Ⅱ【57 ほつれた月】
【シーソーシークワサーⅠのあらすじ】
母を亡くし、その孤独感から、全てを捨てて沖縄から出た凡人(ボンド)こと、元のホストの春未(はるみ)。
一番に連絡をとったのは、東京の出版社に勤める絢だった。
絢に会うまでの道のり、人々との出会いで得たことは何だったのだろう。島に帰った凡人は、母亡き後の、半年間時が止まっていた空間に佇みながら、生い立ちを振り返っていた。
生前の凡人の母、那月は凡人を守って生き抜くためにある決断をしていたのだが……
Ⅱ【57 ほつれた月】
どこに連れて行かれるのかと思えば、古着屋だった。茶屋町から高架下を抜けて、少し行ったところの裏路地でMasaが手招きをした。
朝から降り続いていた雨はようやく小降りになった。すえた臭いがするセーラー服のスカートは湿気を含んで重い。那月の嗅いだことのない臭いがMasaから漂っていた。
父、でもない。父とは、このようなものなのだろうか。生きていれば、目の前の男と同じ背格好だろうか。母はどのような男を好きになったのか知らない。聞く隙も与えなかった。
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