シーソーシークワサー【23 切り分けジェットスタート】
↑前回までのあらすじ
【シーソーシークワサー 23 切り分けジェット】
余白に入ってく邪魔なやつ。隙間風のように通り抜け、しゃあしゃあとして、憎しみの感情を向けたときには、もう逃げていて、その先にはいない。ただ、反感の波紋だけが、次にも連鎖する。
凡人が店を持っていた頃、そんなことはしょっちゅうだった。そのうちに感情が収まるのが人間というもの。トラブル対処に追われて店に顔を出さなくなると、内輪揉めが起きていた。内も外も、家庭からも、恋人からも、波のように連絡が押し寄せた日もあった。凡人は逃げなかった。小さな島である。逃げた先にも知った顔がいる。ただ、少しだけ場を離れて頭を整理する時間を持つ事にさえ、蓋がされている日もあった。
沖縄の夏はどこまでだったのだろう。
11月、浜辺に押し寄せる湿った空気は、肌に吸着していた。そんな事はよく思い出す。逃げ場のない時に、凡人がいつもいく先は海だった。細かい砂に足を沈ませる。寄せては返すさざなみに、足の指はずぶずぶと食い込んだ。何度もそれを繰り返すうち、砂は連れ去られ、後にようやく残るのは足底で捉えていた、輪郭だけ。
夢から覚めた着陸態勢時、凡人は、今までの感情の伴っていた過去を切り分け、脳内で情報として整理し直していた。
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