シーソーシークワーサー Ⅱ【60 おゆとつき 】
【シーソーシークワサーⅠのあらすじ】
母を亡くし、その孤独感から、全てを捨てて沖縄から出た凡人(ボンド)こと、元のホストの春未(はるみ)。
一番に連絡をとったのは、東京の出版社に勤める絢だった。
絢に会うまでの道のり、人々との出会いで得たことは何だったのだろう。島に帰った凡人は、母亡き後の、半年間時が止まっていた空間に佇みながら、生い立ちを振り返っていた。
生前の凡人の母、那月は凡人を守って生き抜くためにある決断をしていたのだが……
Ⅱ【60 おゆとつき 】
「お風呂できたから、入ってね。パジャマはここに置いておくから」
財布の中は僅か、2700円。何も持たずに来た。それでも今後3ヶ月のアルバイトと、安定した衣食住の提供。何から何までをMasa夫婦はくれるという。
べっとりと絡みつくブラトップを脱ぎ、洗濯物は右のかごへと言われるまま、そこに入れた。裏返しにしておくのか、表に戻しておくのか、この家のルールがまだわからない。きちんとたたんで、そこに置いた。
風呂の扉を開くと、天井には丸い窓が。ちょうど、月が出ていた。
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