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歩みを止めたって良い。あなたはあなただ。
例えば、あなたが登山、またはトレッキングに行くことになったとします。
初めて訪れる場所。
行く手には様々なルートがあり、それぞれに異なる風景に出会う事ができます。
そして、どのルートを歩いて行ったとしても、ゴール付近では、これまで目にしたこともないような絶景に出会えるのだそうです。
絶対にゴールまでたどり着きたい。
だから、自分の足でしっかり歩いて、何がなんでもその絶景を見るんだ!
どんな景色が待っているだろう、というドキドキする感じと。
絶対にゴールにたどり着くんだ、という強い思いと。
でも、その険しい道中、果たして本当に自分は越えていくことができるだろうか、という不安と。
色々な気持ちが入り混じっているのを感じているあなた。
そこへ、道中あなたをサポートしてくれる、健脚のベテランガイドさんが現れます。
あなたの中にある様々な思いを、ガイドさんは温かく受け止めて、
「大丈夫です。あなたのペースで歩いていきましょう。私がついてます。」
と、穏やかな口調で励ましてくれました。
「あぁ、このガイドさんなら安心だ」あなたは、自分の中の不安が徐々に薄らいでいくのを感じ、心が躍り始めます。
そしていよいよ出発。
頼れるガイドさんとのトレッキングは心地よく、目の前に幾つかの分かれ道が現れるたびに、「こちらへ行きたい」というあなたの選択を、ガイドさんも優しく受け止めて、一緒にどんどん、どんどん、先へ先へと進んでいきます。
だけど、次第にあなたの足取りが重たくなってきました。
気がつけば、先ほどから、足首が痛み出しています。
なんだか喉も乾いている。だけど、さっき休憩をとったばかりだし、また休みたいって言いにくい…
「もう少し歩くと、素敵な景色があるんですよ!頑張りましょう!もう少し!」
ガイドさんが、横で晴れやかな笑顔を向けて来るものだから、ますますあなたは、自分の感情や言葉を伝えることができません。
そして遂にあなたの中に限界がきました。
ゴールは見えている。
見たかった絶景が、あそこに行けば見られる。
だけど…
本当にもう一歩も歩けないというくらい、辛い…
とうとう、あなたは立ち止まってしまいます。
なんだか体だけじゃなく、心までずっしりと重たくて、なんだか悔しくて涙も出てきそうです。
ダメだった…
情けない…
そんな時に、あなたは、ガイドさんにどんな風に言葉をかけてもらいたいですか?
「大丈夫ですか?ここまでよく頑張りましたね。でも、ゴールは本当にもう少しです。あなたならきっと行けますよ。私がついてますよ。さぁ、一緒にあの景色を見ましょう!」
または、
「大丈夫ですか?ここまでよく頑張りましたね。私は、ここまで来られたあなたを心から誇りに思いますよ。無理しなくても大丈夫。あなたが行きたいと思うタイミングで、またいつでも一緒にゴールを目指しましょう!」
この話は、コーチングセッションをイメージしてもらいやすいように、
メタファーとして描いてみました。
そして大いなる自戒を込めています。
人が自分の中に抱えているドロドロとした部分や見たくなかった影の部分。
それを素直に受け止められることもあれば、やはりそれが大きいものであるほど、相当な苦痛を伴うために、受け入れがたいことだって当然あります。
そこに向き合って、自分の中で消化できたり、受け入れる事ができたら、その影を手放すことができるかもしれない。
だけど、できないことだってあるんですね。
コーチングを学んでいる中で、私は良かれと思って、相手にその影に気づいてもらおう…としている自分がいたことに愕然としました。
先へ行きたいのに、どうしても辛くて、立ち止まってしまうこともある。
そんなあなたでも大丈夫。
あなたは、変わらずあなたですよ。
そんな風にそばにいてあげられるコーチでありたいな、と思った今日この頃です。