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「この世界はさ、本当は幸せだらけなんだよ」

先日ふらっと立ち寄った珈琲屋さん。

ママさん(といっても祖母くらいの齢だろうか)が、「あなたが今日初めてのお客さんよ!」と声をかけてくれた。

本来なら店休日のところを、バレンタインで特別に開けていたそう。でも、いつもに倣って休みだろうと思われてか来客がなかったのだと。
「今日という日に出逢えてよかった。私もあなたも、自分を愛するのもバレンタイン、自分を愛せないと人を大切にできないのよ。」

私はその場で会っただけじゃ、こんな素敵なこと恥ずかしくて言えないかも…でも言われてすごくすごく嬉しかった。

別れ際には「またいつでも帰っておいで。」

生きるのはほんとうに難しい。
毎日失敗や間違いを犯しながら、こんなに人に寄っかかりながらでしか生きられない自分の生の正しさを疑ってばかりだ。
自分がそこに居るだけで人を不快にさせることも、ふとした一言で心を刺すことも、どんなに気をつけたってしてしまっている。自分が在ること居ることを肯定的に思えたことがない。(たぶん死ぬまで悩み続けるので、業だと思うことにしてる)

だから、ただ私がママさんに会ったこと・その場所に立ち寄ったことそれだけで「よかった」と言われて、どうしようもないくらいの安堵感があった。
ママさんにとってはごく普通のなんてことない言葉でも、私には光のような言葉で、心が満たされいく感覚があった。大げさかもしれないけれど。

どうしたって、他人が些細だと笑ったって、思い悩み惑う。
しっかり毎日擦り傷を作って作られている。 

そんなんだから、人が何かをしてくれたことや何気なくかけてくれた嬉しい言葉が、それを受け取るまでにできた傷口に沁みる。大事にしたいって思う。そういう些細でも嬉しかった出来事を両手いっぱいに沢山抱えていたいし、ある時はそれらが盾のように身を守ってくれているのかもしれない。

そうして探してみると、些細な幸せって意外と簡単に見つけられて、実は毎日ちょっとずつ抱えているものを増やしていたりするね。

「この世界はさ、本当は幸せだらけなんだよ」

大好きな『リップヴァンウィンクルの花嫁』の台詞。


また帰ってきたいから、写真は撮らないで店を出た。


#エッセイ #日記 #珈琲屋  
#リップヴァンウィンクルの花嫁

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