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ウェブデザイナーなりたての人がクライアントとちゃんとやりとりできるようになるにはどうしたらいいか考えている
います。
今回の記事はただのウェブ制作の業務で感じたことの覚書です。
学生っぽさの正体を探る
最近、新卒のウェブデザイナー二人と接してやり取りする中で、二人とも知識は十分にあるし能力もある、でもなんかこう「学生っぽさ」があるということが気になってます。そしてその学生っぽいという印象はどういうことなのか、その改善には何ができるのだろうと考えてます。
なんかこう、納品物でなく課題作成みたいな動きになるというか。
進め方や作成がまさに教科書通りというか、全体的にお行儀が良いというか……
なりふりかまわない探索能力こそが初心者と中級者以上をへだてているのではないか
全然別ジャンルの話ですけど、謎解きに慣れた人ほどガンガンにヒントを最初っから開けて終盤のでかい謎に備える、みたいな話がありまして。
ウェブ制作も(というかたぶんどんなことでも)そうで、使えそうなアイテムやツールやノウハウをまず序盤にフルオープンする、RPGでいうならタンスは全部あけるしツボは全部割る、みたいなことが必要なような気がしてます。
同業者と話していても「どれだけ検索能力があるかがそのままわりと実力だよね」みたいなこと話してて、もちろん検索結果を信頼したり使いこなすためには基礎となる知識や経験が必要ではあるんですが、それにしたって経験値の浅い制作者、全然検索しない。与えられた資料と要望という狭い範囲内で答えを出そうとしている。課題や論文制作でそういうのは「ズル」で実力じゃないと思ってでもいるかのように。
そういえばデザイナー職は経験をつめばつむほど「今回の要件に近そうなイメージ」のものを探してきて共有するのが得意になるけど、駆け出しほど、なんかそういうのはしない。
おえかきもそうで、上手い人ほど絶対に資料を探せとかよく見ろとか力説するし、なんなら自分でほぼ描きたい構図や質感の写真撮影すらするんですけど、あんまりお絵描きになれてない人ほど「資料を見るのはズル」みたいなかたくなさがあって、人体でもなんでも何にも見ないで描けることこそが一人前と思い込んでて、そうなろうとしている気がします。(そして資料を見ないから上達しない)
漫画家志望も小説家志望も、なんでか頑なに調べたがらない人、いますよね…… プロは膨大なインプットをしているというのに。
で、この「とにかく使えそうなものは手当たり次第に探索しまくって使う」って、ある程度追い詰められないと身につかない行動なのかもしれないな、とも思ったり。
ブラック以外に探索能力を身につけることはできないのか?
複数人の同業者に問いかけてることがありまして、「結局、自発的に動けるデザイナーになるには結局帰宅時間が毎日23時で毎月徹夜が発生するタイプの会社で一年二年働くしかないんじゃないか?」っていうひどい問いなんですけど。
今の所、「よくないけど確かにそれしかないと思う」という答えが複数人から返ってきてます。
でもよくないよなあ。これはよくない。そんなのわかってるのでじゃあどうするか、というのをさらに考えてみました。
納品物は成績評価ではなく売り物である
まあ見出しの通りなんですけど。学生っぽさ、の一つには「清く正しい工程を踏んだ、本人の評価につながる課題制作」みたいな感覚があり。
で、このへんの感覚から脱するには、デザインのスキル以外の、「依頼されたものは試験ではなくて商品である」という感覚、なのかなあと思ったり。
たとえば私は企業サイトの作成の経験が多いんですが、企業サイトの作成って先方が乗り気ではないことが多いんですよ、受注していてさえ。
クライアントの社長はこんなかんじのスタンスがわりと多い。
「ウェブデザインもほーむぺーじもよくわからん、デザインの良し悪しの決定なんてできない、でもできないしわかんないってあんまり露呈したくないから関わりたくない、かといって今のデザインが時代遅れなのはわかる、金なら普通に出すからあとは勝手にやってくれ」
でもってデザイナーと接することになるクライアント企業の窓口担当社員もこんなかんじ。
「ウェブデザインもほーむぺーじもよくわからん、デザインの良し悪しの決定なんてできない、でもできないしわかんないってあんまり露呈したくないから関わりたくない。ていうか窓口やってるからって普段のメイン業務から完全に外されるわけではないからただただ仕事が増えただけ、できるだけなにも意思決定したり責任とったりせずにやりすごしたい」
ここに学生あがりだったり職業訓練校やデジタルハリウッド卒業したての「想いを形にするデザイナーです! ☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆」みたいな人がぶつかると大事故になります。まあそういうタイプの人が受注できることはあんまりないかもしれないけど……いや営業とディレクターがとってきた案件のチームとしてアサインされることはあるかもしれないけど……
金の流れという事情を察することができるようになる、のがわりと提案できる道かもしれない
企業の案件って「誰もやりたくないけどやらなきゃいけないからやる」「年度末の予算消化をしないといけないからやる」「助成金がおりるからまあやるか」みたいなものもまあそこそこにあって。
だからなんというか、現実を知る、みたいな言い方になると陳腐ですけど、「どうしてクライアントがこの案件を発注したのか」みたいな背後のテンションが押し計れるようになるとけっこう動き方変わってくるんじゃないかなという気がしています。
わたしも若い頃はそのへんの流れから隔離されてたから(縦割り系組織のデザイナーあるある)、わりとアート思考みたいなかんじになっちゃってたけど、「そういうもん」「そういうテンション」みたいな事情があっていろんな案件が動いている、と実感できるようになってから「ほどほど」「そこそこ」
「まあこんなもん」みたいな、いい意味で制作物と距離を取れるようになって、結果的に視野も広くなったし良い提案ができるようにもなったんじゃないかな……という気がしてます。
で、ざっとウェブデザイン系のスクールとか講座とか見てまわっても、このへんの話してるような講座とかないんですよね。デザインスキルとか、せいぜいがヒアリングシートとかの話で、発注の背景を探れみたいな話があんまりない。
そしてそういう話や距離感こそが「経験の長いデザイナー」でないとできないとか話がしやすいと思われたりとかされてるところなのかもしれないし、もっと駆け出しに伝えないといけないことなのかもしれないなとも思ったり思わなかったりしました。デザイン自体に関する教本は、それこそ動画もふくめていまものすごく溢れてるし。
ただそのへんの話ってまとめたり伝えたりしようとすると居酒屋で上司がする自慢話とか1200円くらいの自己啓発書みたいになりそうでもある。
ただやっぱり「金の話」が、ふわふわの幻想をいいかんじに削って砕くツールのような気がしてるんですよね。それで前述の探索などにも躊躇いがなくなるんじゃないかなあ。
結局デザインするもの、成果物のこと、だけ考えてるっていうのが「それを制作する背景が見えてない」ってことで、つまり独りよがりで、その独りよがりが学生っぽいってことかもしれないなあ、
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