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『最後のジェダイ』の観客評価が批評家に比べて異常に低い理由について考えた

スター・ウォーズ最新作、観客から「意外な評価」で業界騒然

という記事を読みました。以下引用。

英語のレビューサイトとして最大級の知名度を誇る「ロッテン・トマト」は、一本の映画に対し、マスメディアに掲載された批評家によるレビューと、ユーザーが投稿する観客レビューをそれぞれ集計し、肯定的なレビューの割合を作品の点数として表示するサイトだ。12月25日現在、「最後のジェダイ」は批評家スコアが92%であるのに対し、観客スコアは52%と大差が生じている。

興行成績は250億円と非常に好調です。ここから完全にネタバレで書くので見ていない人は注意して欲しいのですが、僕には、批評家と観客の評価に明確に差がでた理由はキリスト教に関する観客と批評家の態度の違いが関係しているのではないかと感じました。

物語の途中でレイヤとハン・ソロの息子のカイロ・レン(ベン・ソロ)をルーク・スカイウォーカーが殺そうとする場面があります。これ、旧約聖書の『創世記』で、アブラハムとイサクのエピソードとをモチーフにしているのではないかと、町山智浩さんが言っています。神に試されたアブラハムが息子のイサクを生贄として神に差し出そうとする話です。旧約聖書では、神に息子まで差し出そうとしたアブラハムの信仰心を称える話になっており、イサクは聖人となります。

でも、『最後のジェダイ』では、ベンは叔父さんのルークに殺されそうになり、ダークサイドに落ちるのを決定的にされる話になっています。親に殺されそうになったらそりゃダークサイドに落ちるだろ、という旧約聖書のエピーソードの否定です。

それにもう一つ、こんなシーンがあります。

ルークが隠れているジェダイの寺院があるのですが、そこにあるジェダイの聖典をルークが燃やしてしまいます。ジェダイを終わらせるために聖典を燃やしてしまう、聖典など必要ないという態度で、わざわざヨーダがでてきて、やってしまえとけしかけています。聖書に書かれていることがすべてで、それ以外は必要ないという態度は、トランプの重要な支持団体のキリスト教福音派そのものです。エルサレムにアメリカの大使館を移すというニュースがありましたが、その意志決定に大きな影響を及ぼしたと言われているのがこのキリスト教福音派です。

「エルサレム首都認定 背景にキリスト教福音派が」
ワシントンにある、キリスト教福音派が通う教会です。日曜の礼拝の参加者からは、トランプ大統領の発言を支持する声が相次ぎました。「トランプ大統領が公約を守り、決断したことにとても感謝してます。」「承認するかどうかはアメリカが決めることです。本当はとっくの昔にやるべきだったんです。」

アメリカ国民のおよそ3割を占める「福音派」。大統領選挙で、トランプ氏が勝利した背景の1つには福音派の支持をとりつけたことがあるとの見方もあります。福音派は、政権内にも影響力を広げています。ペンス副大統領も敬けんな福音派で、エルサレムを首都と認めるべきだと主張したといわれています。

この場面は、キリスト教福音派がみたら、ちょっとムッとする描写です。逆に批評家のようなリテラシーの高い人たちが、このトランプ支持者を暗にディスったような表現を高く評価するというのはわかります。それでアメリカ国民の3割の福音派の人たちが低評価するというのはあり得るでしょう。それがまれに見るロッテン・トマトの一般の観客と批評家の評価の差につながっているのではないでしょうか。

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