彫刻
詩です。
12月29日から30日にかけての
一年が限界まで沈殿して底冷えする夜、キンキンに
冷えたタオルケットを身体に巻きつける
歯のがちがちみたいに等間隔に鑿を打つ音は
頭から離れることはなくなった
ペガサスみたいに想像上の音なのだけれど、
たしかに頭蓋骨を削っているような、小さな呻き声で、
その痛みと、ぼくは、
義務でも野次馬でも運命でもなくただの生活として手を繋いでいた
本棚と本棚に入りきらない本が積んであるだけの、大して広くない
ぼくの部屋に彫刻がある
完成してるけれど、これからも手を加えていくであろう彫刻
電柱ほどの細さで、ぼくよりも背が高いのに
天井には届いていないから柱の役割を果たすこともしない
人のかたちにならなくて、寒々しい岩肌が蛍光灯のひかりをザラ
ザラに返してくれるだけ
嫌悪、嫉妬、不安、孤独、寂寥、鬱屈、羞恥、苦痛、苦悶、辛苦
縦書きが増えていくと、不思議と恐れがちいさくなっていって、
部屋の中は、文字の中のように居心地よく汚れていった
こんなことをつらつらと書いてきてしまったのは、けさ、その彫刻
に足の小指をぶつけたからです。
あれはうずくまって笑いを誘うくらいの痛みでした。
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