【詩】印象する地球

眼鏡を外すと重力が強くなって、かがやきが蛸煎餅みたいに潰される。光の縁が曖昧になってから、光に縁がなかったことを思い出す。僕らはフチを作るのが好きなのかもね。地球も国もスマホのカメラも。フチを作る必要が無かっただけなのに、フチがないから空は特別。私たちは同じ空の下にいるね。そう言うことはあっても、同じ地球に立っているとは言わない。フチの中と外は別のお話。
 
昼間の空の青の粒粒が潰されて、青と黒の油絵具がぐにゅっと姿を現して、混交して夜になる。残りの空が滴り落ちたのが川で、無数の川がコンクリートに潰された。潰したコンクリートの中で書類に潰されたサラリーマンは、首と脇腹が裂けて、白と黄色の魂が漂い出て窓ガラスに充満する。コンクリートで繋がった道路には、急用で焼け焦げたオレンジ色の魂が溜まっていく。無数の魂で描き出された夜景を、ヘリコプターから見た新婚さんが、きれいだね、って言い合っている。ヘリポートと航空障害灯があるビルに潰された感情は過剰共感の宇宙に滲んでいった。残されたシミが流れてる涙で、シミの無いのがこの惑星での美人の条件。

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