無色

詩です。


お風呂はいいな、ひとりになれるからいいな
毛とか生えててきもちわるい脛だから、
ゴールデン・レトリバーも寄ってこない
ひじきみたいに揺れている
うねうねと昇っていく湯気
あ、乳白色の浴室の天井から黒色透明の
蜜が垂れている
宇宙が溶け出したみたいに
いったいぜんたいどこにこれだけの
量があったのかと思わせる
白い鎧の歩兵の密集体形に
黒い騎馬隊が錐形で突撃する
どこかから叫喚と叫喚がぶつかり合う音が
きこえる
湯船に浸かりながら蜜漬けにされる
ぼくは二度づけ禁止ではありません
あとからやってきた粘度の高い液体は
非常に冷たい
針山地獄にやってくる冬ぐらい冷たい
なにもかもが浸透圧ではいってきて、
熟れすぎたトマトみたいにぐじゃぐじゃになる
浴槽からこぼれたなにかは、
排水口に吸い込まれていった



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