【詩】洗濯舟

何度傾けても飲み干せないカップの底のコーヒー
何本線を引いても詩にまとまらないスケッチブック
ジャガイモが洗われるように揺さぶられる部屋
デスクライトに焼かれてのたうちまわる虫
アメーバ剥きのみかんの皮がカサカサに冬枯れている
積み上げてきたものが無に帰したように崩れた本、本、本、本
日なたに置いた氷菓子のように色褪せた旧版の国語辞典
棚の足に噛ませられた裂けるまで使った単語帳
ふかふかの埃に埋もれたドラえもん
36度分遅れて夕焼けたことに気付く6分前を示す時計
賃上げ要求のように切迫して給油を求めるストーブ
ハンガーから離せなくなったブレザーみたいにずり落ちたケーブル
トイレの隅に溜まる蜘蛛の巣みたいにいつのまにか倦んで、吐き気
何も成し遂げていないのに眠ることがこわくて
拠り所のないベッドには入らずぶよぶよの畳を踏む



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出会っていただきありがとうございます。



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