
グレーのポロシャツが汗で地層
この街の横断歩道の脇には
螺旋状の地層がある。
雑巾絞りされたチョコレートケーキ
みたいな、石と骨と
あったかかった部分たちが溜まった土塊が、
肉体から出ていかざるを得なくなった
魂が天に昇るみたいに立っている。
青空には届かなかったけど、テニスラケット
に打ち上げられた光を浴びている。
LEDライトのレジンに固められたレンガが、
黒いコンクリートをモルタルにして
積み上がる。
航空障害灯が、血が流れ出ているように
明滅している。
桜の木のように増やしていったビルが
林立する。
夜に覆われた景色が美しかった時代。
微熱くらいの夕方の空気が、
腕の薄皮をめくれあがらせるみたいに
ピリピリさせる。思ったよりも
ベッドに沈む躰と、読んで重ねた漫画が
不安定。
数字も本屋さんみたいに
揃っていることはなくて、
皮一枚隔てられた時間の流れと合わなくて、
耳抜きで破いて、いっしょくたに
なってしまえば楽だと思った。
肩車されて雲に近づいた世界は、
セイタカアワダチソウに
回り込まれていないから、
風が吹き抜けていって気持ちいい。
揺れるたびに髪の毛が擦れて、滑るのが
怖くて、髭がちょっと痛いけど
アゴを掴んでた。
堅い地盤に建っていた
身体が細かく揺れながら、
シスターがゴスペルを歌うみたいに
大口を空けて明朗に放つ。