エイス
地球は、ゴツゴツ欠けた星肌に、水のラベルを貼っている。お日様がいらなかった水を
押し付けられたんじゃなくて、地面が水を求めてるから、
川を作って流して集めた、球状の水溜まりが
碧く光を反射する。地球へ向かって、
トイレの鏡の前でいじる前髪みたいに伸びた、
デブリの橋がゆらゆら揺れて、繋いだ手から心が同調していく。
剥き出しになった月の肌は、白く乾いて粉を吹いて、
垂らされた水は溶けて消えてく。いのちの源だから
ありえないと浴びせられ続けて、モノがない部屋を
ゴミがなくて綺麗と云われた時に指射される胃の中の空間みたいな、宇宙塵すらないまっさらな黒色が浮かび上がる。
なまじっか知識があるもんで、月には見えないところがあるんだよってことになる。あなたは欠けてないよってことは、欠けてるように見えてるぼくはいなくなってる。
三日月も半月も、中肉中背みたいな月も、見えてるのに無いってことにされる。