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夢祭(ムーサイ)
ベッドの祭壇に躰を捧げる。
夜はこの供え物を受け取ってくれなかった。
ブルーライトが良くないとか、
いろいろ言うけど、朱い季節の青白い月は
きれいだ。とてもちいさくて。
アブ・パルナッソスを唱える。
二階から見える花火みたいな音を立てながら、
時計の針は時を刻む。
朧月夜、提灯色のりんご飴。
りんごが落ちた時のような、シナプスの発火を待っている。
アブ・パルナッソスを唱える。
女神のウーアーに合わせて、紋白蝶が揺れる。
タオルケットを掛け直す。
背中の汗を舐め取っていった風が光る。
残していった光子を眺めながら
砂日傘がつくった闇を吸い込む。
アブ・パルナッソスを唱える。
山上からの竪琴の調べが、
青葉の御簾の下から手枕となって差し出される。
私はそれに背を向ける。
そんなつまらない夢など見ない。
アブ・パルナッソスを唱える。