広場が戻ってきた

広場に戻ってきた。夕風が、脂っぽい暑さに、清涼感を加える。むかしは、かばんと水筒を置いていただけのベンチに、いまは腰掛ける。ちいさくて、すわり心地も、あまりよくないことを知った。地面の砂は、砂というより石のこどもっていう感じで、灰白色でジャリジャリ鳴る。砂利はザクザク。滑りやすくてよく怪我をしていた。怪我は元気の証拠、って言われてたけど、細かいいさごは結構痛かった。
広場を離れて、いろんな道を歩いた。田んぼ道では、蛙の合唱を聞いた。いまでも、肴になる文句しか出てこない。照り返しの舗装路。残響音のトンネル。もう歩けないところも、もう歩きたくないところもある。
ボールが転がってくる。蹴って返す。足の親指の先の爪は痛いけど、砂を蹴っている音は、跳びはねまわっている。あのころは、現実に広場にいたけど、いまになって、広場がリアルな世界なんだって分かった。

いいなと思ったら応援しよう!