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詩集『閑文字』

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伽戸ミナがつくった詩を載せています。読んで頂けたらうれしいです。
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2023年12月の記事一覧

いいいみでおとな

詩です。
三行だけです。

子どもの純粋さを笑ってしまった後悔と
笑われた子どものすり傷は、
地平線の夕陽が乾かしてくれます。

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読んでいただきありがとうございます。
スキやフォローもしていただけるとうれしいです。

【詩】12月12日

特別に有能なわけでもないから、死ね
でも消えろでも才能ないでもゴミを書
くなでも言われていたら、傷つきなが
ら怒りながら生きていられただろうけ
ど、世界は12月12日のようにただ寒い
だけだった。

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出会っていただきありがとうございます。

【詩】映画館の近くに住んでいても映画好きにはならない

最近のアニメーション映像に、人間の細胞核は
真珠だって教えてもらったんだ。そしたら街の、
朝の金箔夜の銀箔に気付くことができて
世界が変わったんだ。大人は自分の青少年時代の
青春の部分しか覚えてられないから
わたしが制服をやめるのをゆるせない。
わたしが制服で歩いている街は、とってもレンガ。
レンガの真似をしたチェックのスカートが
わたしの細胞構造になり替わろうとしているのを、見ていた。
誰でもな

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【詩】洗濯舟

何度傾けても飲み干せないカップの底のコーヒー
何本線を引いても詩にまとまらないスケッチブック
ジャガイモが洗われるように揺さぶられる部屋
デスクライトに焼かれてのたうちまわる虫
アメーバ剥きのみかんの皮がカサカサに冬枯れている
積み上げてきたものが無に帰したように崩れた本、本、本、本
日なたに置いた氷菓子のように色褪せた旧版の国語辞典
棚の足に噛ませられた裂けるまで使った単語帳
ふかふかの埃に埋も

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【詩】あげは蝶

 右の翅がビッタリと蜘蛛の巣につかまって、
 左の翅が風に煽られてゆらゆら揺れている
そのゆらめきが踊り子のようでキレイだねって
言ってくれるバッタもいない
 のっそりのっそりちかづく蜘蛛
春風の甘さってどんなものだと思う?
つつじみたいなものじゃない?それだと、
さらっさらで水っぽすぎちゃう気がするんだよ
じゃあ、なのはなに近いんじゃないかな?
ちょっとねばりが強いよ。あとに残るのがクドすぎるよ

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【詩】葬式

ぼくが十九歳のとき、二十三歳の友だちが死んだんだ
 セカオワが似合う夜空のイチバン星
 みたいなホクロが、彼女の口元にあって
ぼくはそこにバク転をするように吸いこまれたりしていたんだ
どこからか迷いこんできた痩せこけたタヌキが、
勃起したら、それは性の目覚めだよって教えてくれた
 んだけど、それは土塊みたいなものだった
秋、秋、深まっている秋、
イチョウの絨毯爆撃から逃れ逃れのアリが
忠実に神様に

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