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閑文字

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詩をまとめています。楽しんでいただけたらうれしいです。
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2023年11月の記事一覧

【詩】あげは蝶

 あたし、あげは蝶
 じゆうな、じゆうな、あげは蝶
赤、黄、赤、黄、赤、赤、黄。
蟻んこ達がうらやんでいる、シルクの翅に
 あまい風いっぱいはらまして、
お花畑をとんでたの
 
 あたし、あげは蝶
 かなしい、かなしい、あげは蝶
赤、黄、赤、黄、赤、赤、黄。
 おおきな赤をめざしてて
きれいなくもの巣にかかったの
 赤、黄、赤、黄、赤
のっそのっそ近づくくもに
たべられるまえ、さいごの景色は
 か

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【詩】水彩

ススキが小首をかしげるように揺れててさ
秋風ってここから吹きはじめるんじゃないかなって思ったんだ。四
 季は秋からはじまるみたいに。秋の次にやってくる
 夏の強烈な光が焼きついているから、逆さに干されたクマのぬい
ぐるみと、植え込みに埋め込まれた幼児サイズのスニーカーと、
一枚のレシートが舞い上がっているのを、
 うっすらと思い出してしまうんでしょう。
 
都会に疲れたオレが眺めるこの池の水面の黒

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【詩】墓地

あおくかがやく生け垣ができたという
喜びが、かくしている墓地がある
別世界のように美しければ、
きみが大根を煮るのとは
別の世界にしてしまってよくなる
あかくかがやく星を見つけた学者は、
それを、よく炎上しているから
火星と名付けた
いつも煌々としている、望遠鏡の中のそれを
乾燥と空白だけの自分たちとは違う、
この世界の希望だと、
口角泡を飛ばしながら語っている

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【詩】空に知られぬ村時雨

【詩】空に知られぬ村時雨

愛人の葬式です
押し込めるように曇り空です
 
青空からは
天使の羽根色の光を帯びて
チョココロネのように
渦巻きながら降りてきて、
白土地からは
御簾の砂塵を
アリジゴクのように
噴き出しながら昇っていって、
天と地は、
ゆびきりげんまんしました
 
森がうまれたのに
意志があるように見えないのを
薄情に思ってしまいます
 
時雨が降りました
なにかを隠すように降りました
洗われた空に
星の居場

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