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伽戸ミナ
2023年2月27日 17:18
冬が終わる時期になると 春の壱番隊がやってきて 研ぎ澄ました包丁で 夜空の表面の鱗を 魚市場みたいに剥がす音がきこえる 冬のあいだ 恋人たちの敵役だった 鱗が 飛び散る つめたくてよくきれる 皮膚が切れて 肉の断面が見えても 血は流れていなかった 自分の肉体じゃないのかもしれない 自分の肉体とスウェットの 境界線がなくなっているのかもしれない 夜よりも 自分は にんげんじゃないんじゃないかというこ
2023年2月20日 17:11
じんせいはたびすること柄のシャツの上に ジャケットを羽織ってネクタイを締めて 電車に揺られるにんげんは 脂ぎった光をしている かがみを見るのは嫌いになったから 透明なにんげんを見て 空気のない宇宙空間の 空気を燃やしながら進む流星みたいな 光を 放つ言葉 を見ている 世界は美しい 自分のいる世界は美しい 美しくない自分でも いる世界は美しい から 安心して電車に乗っていい らしい 連結部分のたびに
2023年2月14日 17:15
いつもアスファルトの上に立っているから忘れちゃうけど、カタラーナみたいにアスファルトの下には土がある。雑草が割ったアスファルトからは土が見えて、掘っていくことができる。街に潜るように掘りすすんで、到達したところが詩だから、詩とはじごくの空気なのかもしれない。地獄は、画数が多くて恐いけど、ほんとうはじごくって感じ。ひとは地球の空気でしか生きられないし、火星人は火星の空気でしか生きられないし、流れ星は
2023年2月9日 17:14
文字にならない声は ゲンジボタルみたいなひかりになって にんげんを 星空に沈めるように漂っていた 耳から 髪から 指先から 必要としている だれかに向かって とびたっていった 瞳からでてきたひかりは 時には拒絶してしまうくらい やさしかったひかりを束ねると 電気になるとわかった 電気はひつようだから 年に一度 収穫祭をするようになった 六歳になったら 自分のひかりをささげる ふんばって 口からひ
2023年2月6日 16:54
鋭角三角形みたいな冷気が二粒あわさってできた星が、オリオン座みたいに結び合わされて、結び目がどんどんふえていって、固くなって出来上がった包丁が、夜空の表面を撫でる。夜空を覆っていた鱗が飛び散る。それは必殺・降鱗流星斬になって僕に襲いかかる。それは一瞬の光の奔流だった。皮が裂け肉の断面が見えていても、僕から血は流れていなかった。夜よりも、自分は人間じゃないんじゃないか、ということの方がこわかった。
2023年2月1日 22:03
東京の真ん中から、神奈川の隅の六畳一間の隅まで、撃ちぬける歌をうたうアーティストを飾る、すごい照明器具があるから、光もすごいってことになっている。ゲームもカメラも最新作は、夢想的な美しさをしていて、どれだけの絶景を再現しても飽きたらず、透明まで美しくしようとしている。他人の為のメイクやファッションって、眼球とのあいだの、透明に施しているのかもしれない。えのぐと違って、夜は冬みたいに、空気を染めてい