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詩集『閑文字』

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伽戸ミナがつくった詩を載せています。読んで頂けたらうれしいです。
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2022年12月の記事一覧

【詩】詩歌・学

テストには出ない適応障害について学ぶことのたのしさ
 
アリは 一匹ではどうしようもないから
列をつくってから キャンディをひろいにいく
小鳥は じめんを走れないから
公園を見つけてから おりていく
イチョウは どこにも行けないから
葉を散らして 景色を変える
水は 立つことができないから
河をつくって 海を目指す
神様は 闇の中でどうしたらいいか分からんくなるから
光をともしてから 人間をつくっ

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【詩】詩歌・春

「春は来にけり」と詠んで顔を上げればもう春は来ていたんだなあ
 
桜のなかにあった春は いまやソメイヨシノのなかにある
しょくぶつにも開発したって言葉を使うから
人類はなんでもかんでも大発明して手に入れてきたっておもうんだろう
キリンの首は長いです 詩とは音楽です
春もソメイヨシノもキリンも言葉も音楽も 空間の一領域にすぎないのです

【詩】会話

コーヒー飲む?、飲む、ペットボトルだけどね、開け方で味かわるんだよ、どう?、おいしい、どれくらい?、国連が雇って会議で出したら世界平和になるくらい、幸福ってのは舌の上にある、見えても見えなくても。
人生は演劇ってのは良く言ったもんでさ。くっきりはっきりさせるために自然界には存在しない光を当てられてさ、名だたる俳優と名もなき俳優で傷だらけになった板の上だとさ、当然緊張する。緊張し過ぎたら、感情的に弱

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【詩】パーティー開け

いっこめのめいれいで、光がうまれたとき、ポテチのふくろのパーティー開けみたいな音がしただろう。
にこめのめいれいで、水がわかれて空ができたとき、のりしおの匂いにつつまれた。
さんこめで陸があらわれて、よんこめで植物がおおいしげった。
りんご、ごま、まんごー、ご?お?、お、おじぎそう、うめ、めろん
じゃなくてめたせこいあ、あじさい、いちじく、くー、く、く、く、くちなし、しろつめくさ、さくらんぼ、ほで

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【詩】自殺するときは快晴がいい

自殺するときは快晴がいい。飛び降りたいから。張り詰め過ぎて生きなきゃいけない街を歩いていると、前髪しかない神様に間違えられて、髪の毛を鷲掴まれる。どうなるか分からないんだからとりあえず掴まないと。神様ってこんなに背が低いのかな。ようやくきた冬青空は、嘘みたいに青くて、嘘みたいに寒くて、陽光にも騙されている気がした。液はさんずいに夜って書くから、夜で溺死できたらいいのに。心臓を止めるのにもエネルギー

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【詩】耳

耳はカタい。音をよく反射させる為。神様がオリヅルみたいな几帳面な皺をつけた。でも神様は、耳を折りながら久保田利伸を聴いているから、MissingとLA・LA・LA LOVESONGで出来上がりが変わる。ボクのみみときみのミミが違うのはその所為。ぜんぶ久保田利伸のせい。
耳はやわらかい。からだのいちばん外側にあるのにやわらかいから、トンビがいつも狙っている。やわらかいってのは隙間が多いってことで、温

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【詩】時間旅行

オフサイドを知らなくても楽しめるサッカーから最高のコンテンツの座を奪ったのは時間旅行装置だった。当初は、特殊な電波が脳に悪影響を与えて記憶力が低下するとか、開発者の過去の不祥事とか、いろいろ言われたけど、時間旅行の快楽を知ったら、みんなの頭からきれいに流されたようだった。
 
金閣に名を奪われた鹿苑寺裏山の松が今日も碧い
壁じゅうに金箔を貼ってるってことは、なにかを隠してる。金は透明じゃないからき

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