2022年3月の記事一覧
詩『焼き豆腐のない街のすきやき鍋』
レンガに支配された街では
こってりした汁をたっぷり吸った焼き豆腐を食べられない
箸で摘めるくらいにはかたいけど、
テレビを見てると割れちゃうくらいにやわらかい
かたいのか、やわらかいのか、
よくわからないものは要らなくて、レンガが必要とされる
レンガをきっちり並べて、モルタルでびっちり隙間を埋めて、
出来上がった壁があればいい
焼き豆腐はいらない
詩『ペットボトルコーヒー』
タンブラーに夜の残滓を注ぐ
布団のあったかさに炒られて、汗臭くなったから、君はいないんだろう
中学生でブラックを飲んでると、大人だね、って言われた、舌がこどもだから飲めない、って言ってた
慣れさせられただけなのにね
なるべく早く大人になりましょうの時代
こどもは、純粋で、残酷で、活発で、爛漫で、無知で、愚かです
寄り添うヒマがないので大人になってください
朝がと朝にが夜を飲み干す
詩『ここはダイバーシティ』
僕はこの町をしっているよ
明かりの一つ一つが町をつくっているのをしっているよ
となりのとなりのお隣さんが
手の中の世界で叫んでいるのをしっているよ
急坂を下りた向かいの彼が
クマさんを抱いて寝るのをしっているよ
公園の近くのあの子が
朝の光で眠くなるのをしっているよ
線路のこっち側の君が
とんかつの味を知らないのをしっているよ
僕はこの町をしっているよ
この町は僕をしっているか