「一歩 踏み込む」
WEDNESDAY PRESS 062
ある女性に「私の名前が読めたら、話を聞く!」と言われた名前が「歩子」であった。しばし考えたが、名前が出てこない。「最初に一歩(イッポ)ってゆうでしょ」と。正解は「ポコ」である。読むことはできなかったが、なぜか「一歩」という言葉がずっと頭に残っていた。
そして天ぷらの料理人の取材を始めたとき、参考にしたのが「最後の職人」という銀座の天ぷら「近藤」の近藤文夫さんのノンフィクション。作者は中原一歩というノンフィクション作家であった。一歩という名前がずっと印象に残っていた。先日新聞の切り抜きで「悩んだ時ほど 踏み込む一歩」という記事を見つけた。その中で「うまい、うまくないという主観で書くな。厨房や仕入れの現場を取材し事実のウラを取るジャーナリストになれ」という言葉が転機になったと書く。続けて「取材で悩んだ時ほど 一歩踏み込め、と自分に言い聞かせます」と綴る。そして「それで後悔したことは一度もない」と閉める。
最初の一歩があり、悩んだ時ほど一歩踏み込む。
一歩の大切さをしみじみ感じていた。効率ばかり求める現代に、忘れていたことでもある。