六曜社
WEDNESDAY PRESS 014
中学2年生の冬休み、兄と滋賀県のスキー場に出かけた。
スキーに始めて挑戦した。
最初からうまく滑ることができるはずがない。挫折と悔しさを胸に抱いていた。
その様子を知ってかどうか判断しにくいが、兄は京都三条河原町にある「六曜社」という喫茶店に僕を連れて行ってくれた。
コーヒーとの出会いは、小学6年生の夏休みに京都三条堺町にある「イノダコーヒ店」であった。
ここを案内したのも兄である。陽光の差し込む明るい雰囲気であったが「六曜社」は夜であり、紫煙が立ち込めていた記憶もしっかり残っている。
すごく大人の雰囲気がすると感じていた。
その「六曜社」のことを記した「京都・六曜社三代記 喫茶の一族」(樺山聡著・京阪神エルマガジン社刊)が出版され、読み終えた。自分自身の青春時代と重なるところも多く、また初代から三代にわたる「六曜社」の凄みも感じることができ、
非常に興味深い内容であった。
「六曜社」は現在、地階が創業者奥野實さんの三男が珈琲店を営み、その息子が一階を切り盛りするという構造である。三代続くことも素晴らしいが、二代目と三代目が地下と地上で一緒に商売をする。これは小さな奇跡と言っていいくらいの偉業だと思う。
先日も地階でブレンドコーヒーとドーナッツを食べ、修さんと少し言葉を交わすことができた。歴史は刻まれているのだ。