「味の言葉」
WEDNESDAY PRESS 055
随分以前のことである。
料理名を一切書かずに、味の描写だけで、その感動を伝えようと思い、言葉を並べたことがある。知りう単語や形容詞を駆使したが、なかなかその料理を表現するには至らなかった。
そんな話を先輩にすると「それは難しいですね。料理は初めて食べる以外は、みんなその料理に対して記憶というか思い出があるので、料理名がわからないと伝わりにくい」と言われた。
確かにカレーライスという料理に対して抱くイメージは千差万別。
僕自身でも色々なカレーが浮かんでくる。つまり味は記憶と深く繋がっているのだ。
半年ほど前のこと。
ある大学の教授から「味の表現のマトリックスのようなものをつくりたい。門上さんのブログを使うことは可能ですか?」と打診された。簡単な気持ちで「いいですよ」と答えたままに歳月が流れた。
つい先日、一応基本形が出来上がってきた。
6000軒余のレストランに対するブログで、味を表現するために僕が使った単語を全て検索したのだ。それは「スッキリ」や「甘い」などから「シャキシャキ」など多岐にわたる。もっとも使用頻度の高い単語は、想像しなかった「しっかり」であった。この検索ワードを、多様に展開できる。「しっかり」を使うレストランをジャンル、エリアで探すこともできる。
また一軒のレストランで、どの単語が一番よく使われるか、ビジュアルで解明するなどなど、このマトリックスは多様な使い方がでできると感じた。
これから精度を上げてゆく作業に入るようだ。
完成した際には、改めてお伝えしたい。