日本の色
WEDNESDAY PRESS 015
「日本の色 吉岡幸雄の仕事と蒐集」という展覧会が京都・岡崎の細見美術館で開催中である。
吉岡幸雄氏は「染司よしおか」の5代目にして日本を代表する染色家であり、染織史家でもある。一昨年の秋、急逝された。
その吉岡氏の追悼展でもある。僕は吉岡先生と記したい。
数年前に「柏屋」という大阪の料理屋で、吉岡先生に「日本の色」について話を聞き、その後その色を料理の中に巧みに取り入れた。その時、日本の古代の色の奥域の深さや意味に触れることができ、料理だけでなく「色」について考えるきっかけをもらった。吉岡先生の軽やかであり、蘊蓄のある語り口に魅了された。
今回改めて吉岡先生の仕事の全容に触れることができ、かつ先生が収集されていた貴重な資料とも出会うことができた。インドや東南アジアの染織を目の当たりにして、その細密にして構図や背景に見え隠れする文化の熟成度には、驚くべきものが隠されているように感じたのであった。吉岡先生は、染織遺品の保存と修復も数多く手がけられ、その一部を見ることとかなりの刺激を受ける。
日本の古代の色。それらを重ねることで生まれる意味。これは以前にも接して驚愕したのだが、再びのその世界に触れ、色を感じ、そこから読み取る世界観などについて興味を抱いたのであった。
料理の世界も色が重要な要素を持つ。色は観る人のそれまでの人生によって感じ方が大きく変わるのだが、その向こう側に広がる深遠なモノやコトを少し認識できたような展覧会である。
4月11日まで開催中。
https://www.emuseum.or.jp/exhibition/ex071/index.html