「金属と紙」
WEDNESDAY PRESS 035
京都西陣の「かみ添」という小さな工房がある。
「型押し」という古典印刷技術で多種多彩な板木を使い、手摺りにより文様を写した紙を販売する。主人は嘉戸浩さん。
そこで中村友美さんと嘉戸浩さんの「重なりの」という二人展が開催された。
中村友美さんは、奈良在住の金工作家である。
日常は鍛金で薬缶や器を作っている。
今回は金属と紙が出会うことによる美しさを追求した試み。
金属と紙では表情が全く異なる。
凛とした感触と緩やかな質感が織りなす作品に魅了された。
画像の作品を前にして中村さんは「金属を曲げる時にはかなり強い力で打ちつけなければなりません。でも角はどうしても少しまあるいカーブが生まれます。紙は反対にすぐに折れるのですが、そのカーブは鋭角です」と話してくれた。
硬さは、圧倒的に金属の方が硬い。
でも表情は柔らかな世界が生まれる。
この作品を見るとその言葉の意味がよくわかる。
違和感がどこかに親しみやすさに変わっていった。
素材の違いが生み出す世界。
その二つが対になったときに見えてくるモノがある。
午後の陽だまりの中に心地よさそうに置かれた作品を愛おしく感じた。