20230924

24時間舞台参加作品『夜がくれる』終演しました。
準備期間約3週間という、自分史上もっとも短いお付き合いだったにも関わらず、自分史上もっとも切実なさみしさをいま抱きしめています。

いろんなところでおもしろおかしく説明済みですが、わたしの言葉でもあらためて、経緯を。

9/4、門と小沢が参加していた、劇団白色『ウツボカズラ、飯を食え！』にて、自由バンド主宰健康くんにお仕事で来れない小沢の代理として一日舞監を務めてもらいました。その節は本当にありがとう。その打ち上げの席で、もちろん24時間舞台の話になり。

めっちゃおもしろいことやってるね、Twitter見てるよ、なんかキャンセル続いちゃったんやって？　いまどこが空いてるん？　ふむふむ。
…小沢さん！　朝6〜8時空いてるって！　なんかやろう！　諏訪ちゃんにも聞いてみる！

そして小沢さんの返事もろくに待たず、その場でもうひとりのCLOUD9メンバー諏訪ちゃんに連絡。

話が早すぎる。だいすき。
かくして、わたしたちの24時間舞台参戦は決まりました。

諏訪ちゃんへのLINEのとおり、じつは前々から演劇ではない照明、ことばのない世界の照明についてもくもくと空想していました。光は、もっと遠くまでいけるはずだと常々考えていて。しかしわたしのつくる明かりは、台本という、この世界に現れたくて大声をあげているその言葉が呼んでくれるから形になるわけで。わたしひとりで何かやる勇気もないし、やったところでそれはわたしの見たいものにはならないんだろうなあ、と。
でも諏訪ちゃんとなら、そこへ行けると思いました。2月、はじめて会った日、『まだここは』の美術プランを見せてくれたときのぞわぞわが、いまもずっと続いていて、諏訪ちゃんとなにかつくるのはずっとたのしい。それでわたしは諏訪ちゃんを信じているのです。

朝の時間が空いていると聞いたときから決まっていたことがあります。主役は「朝日」だということです。調べると9/24の日の出は5:47。健康くんにお願いして、スタートを6時から5時に早めてもらいました。無理を聞いてくれてありがとう。

夜が明けるときの空がすきです。この世のなによりもうつくしいと思う。わたしは早起きが得意ではないので、それを見るのはたいていうまく眠れなかった日のベランダです。そんなきわめて個人的な時間と結びついているからこそ、こんなにもうつくしいと感じるのだと思います。だからわたしにとって朝日は、だれとも共有されないかわりに、奪われることの絶対にない、宝物のようなものでした。
わたしにとって朝は孤独の象徴で、それを真ん中に作品をつくるということは、みんなひとりぼっちのまま同じ空間にいるという状態をつくることでした。

小沢さんがメンバーシップを始めると決めたときのnoteで、つくっていきたい「ぽかぽかした温かい場所」に差す光がつくる「陰の部分」の喩えのひとつとして、“夜明け前のベランダ”という言葉を挙げていたことがあって。そのときに、小沢さんとは、わたしのさみしさはさみしさのままで、お互いひとりとひとりのままで、一緒にいられるかもしれないと思いました。
それは別の場所で、別の形で諏訪ちゃんにも思ったことがあって。そういう、こちらはそうだけど向こうがそうかはわからない、けどそれでいい、わたしがそう思っていることそのものがひかり。そういう感じなんです、わたしがひとに対して希望を感じるときは。

『夜がくれる』をつくっているとき、作品で表現する、孤独の「朝のくらやみ」と、一緒につくっている「人へのひかり」のふたつを見つめていました。高校生のとき、日々をやり過ごすことで精一杯だったわたしと、いま、すきな人と次はなにしよう？ってわくわく生きているわたし、ふたりとも大事にできるしあわせな制作期間でした。

さらにしあわせなことに、わたしがいままで関わってきた作品の中で、いちばん境目があいまいでした。どういうふうにあいまいだったかというと、まず、終演翌日、小沢さんが自分のラジオの生放送で言ってたみたいに、3人の大きさがほとんど一緒でした。それから、わたしにとってはこれが大きくて、ぱきぱき言葉で区切られる前の、記憶や体験に基づく思考を共有できた(ように感じた)こと。言葉って、可能性を狭めていくものだから、重ねれば重ねるほど言いたいことから離れていく。だからできるだけ少ない言葉で通じ合いたいと思う。単語と単語をわざと繋げなかったりする。小沢さんと諏訪ちゃんは、考えていることを言葉にしきらないままぽこぽこ投げてみても、わかろうとして聞いてくれます。ありがとう。

3人ともまあまあ忙しく、わたしがなんとなくやりたいと思っていることを2人に伝えただけでなにも決まっていない状態のまま1週間が過ぎたころに、3人で電話会議をしました。なんで録音しとかんかったんやろうと後悔するくらいすばらしい3時間でした。みんなにも聞いてほしかった、笑
この電話で、わたしたち3人の視線が交わって、ただのわたしの空想が『夜がくれる』という名前をもらって、輪郭を持って、ようやく制作が始まりました。

実感としては、この電話でわたしのできることはほとんどやりきっていて、それからあとは受け取ってくれた諏訪ちゃんが細かな空間づくりをしてくれて、そこに小沢さんが彼として居てくれて、それで『夜がくれる』は完成しました。
というのも、照明に関しては会場の下見に行ったときに、そのときは夜だったのですが、南東向きの大きな窓が目の前の駅の蛍光灯の光を十二分に取り入れていて、この光の前にはどんな計画も無意味だとわかったからです。まちがいなく、昇る朝日を余すことなくうつしてくれる。
自然光に畏敬の念を抱いているので、作品に組み込んでしまうことができてうれしかった。
24日の宇宙はいつも通り、最高の仕事をしてくれましたね、

じつはお客さんが少ないであろうことも、この企画をやりたいと口にした決め手の一つでした。台詞なし、ただ人が座ってぼんやりしているのを見るだけの2時間です。さすがにこれ単品で提供するのは、無理とは言わないまでもかなり難しい企画です。その意味でも、24時間舞台は最高のお皿でした。開演までの24時間舞台の演目や時間そのものが、『夜がくれる』の理想の客席をつくってくれていました。
バタバタしていて正確な動員数を数えるのを忘れてしまったのですが、想定していた2倍以上のお客さんに観ていただきました。中にはCLOUD9のために、前日の終電で来てくれたり、車や自転車で来てくれた方もいました。
「行きます」という連絡や、応援チケット購入の連絡のたび、身が引き締まる思いでした。本当に、ありがとうございました。
じつは開演の本当に直前まで、なんなら開演して5分くらいまでは、『夜がくれる』がどうなるのか、本当にやる価値があるものになるか、わたしたちもまったく確証が持てずにいました。けれど10分ほど経って、すこし遅れて着席した方も落ち着いたころ、ふっ　と一段しずかになって、そのときに、やれてよかったと心の底から思いました。ほとんど奇跡でした。感謝のきもちでいっぱいになりました。まちがいなく、観客のみなさんがつくってくれた作品でした。
もとはただのわたしの空想だったものを、こんなにもうつくしいものにしてくれて、ありがとう。

去年の秋に小沢さんと出会って、この人と一緒になにかしたいと思って、
2月、諏訪ちゃんと出会って、『まだここは』を一緒に終えて、できるかぎり一緒になにかしていようって決めて、
夏、大事な名前をわけてもらって、
その2人と一緒に、3人で、この作品をつくれたことが、なによりうれしい。
しあわせな、宝物の2週間でした。

ありがとうございました