ランサーズらしく頑張って!! #私とランサーズ
古巣ランサーズの上場を喜ぶOBたちの回顧録「ランサーズリレー企画」だが、ランサーさんも巻き込みつつ、いよいよ2019年大晦日に最終回ということで、元取締役COOの足立がトリを務めます。
▼ランサーズリレー企画
01 ベンチャー、ランサーズ、僕
02 嵐の中を突き進む力
03 「戦友」という存在を得た場所
04 RUNサーズ
05 人生を切り開く言霊 〜上司にもらった本気の言葉〜
06 株式会社リートだった、ランサーズの「あの頃」
07 誰もが新しい働き方を創る同志だった
08 新卒がスタートアップで学んだこと
09 失敗と成長を共に歩む
10 新卒でスタートアップに入社するということ
11 ビジョン×エグゼキューション=スタートアップ
12 「マーケ未経験26歳男」がスタートアップで見出したキャリア
13 ビジョン実現を目指し、軋む螺旋階段を登る
14 エポックメイカー=ランサーズ
圧倒的大義
その日は突然やってきた。母が末期の癌だとわかり、余命があと二年だという。所謂マザコンということはまったくないのだが、ろくに親孝行もしてこなかったので、残された二年という時間の使い道について真剣に考えた。そんなとき、秋好さんに出会った。フリーランサーとして頑張っているランサーさんを幸せにしたい!日本の就労課題と向き合い、個をエンパワーメントする。「圧倒的大義」が、ランサーズのビジョンにはあった。そんな大義に向き合う姿を、母が人生を終えるその日まで、その目に映していたい。そういう思いが、ランサーズ参画のきっかけだった。
ある日、秋好さんはぼくの地元福岡に来てくれて、ぼくの両親と一緒に食事をした。そのとき彼は、外国人記者クラブで日本のフリーランスの就労環境についてスピーチをしたときの写真を、印刷して持ってきていて、「足立さんは、凄く頑張ってますよ」と両親に話してくれた。母は喜んでその写真を受け取っていた。後日、痴呆でぼくのことを認識できなくなった祖母が、その写真をぼくに見せて、孫が東京で頑張っているんだと自慢してきた。その様子を家族は笑顔で見ていた。秋好さんという人は、そういうギフトをくれる人だ。
参画初年度は、本当によく働いた。日中みずから営業し、夕方会社に戻ると、メンバーへのフィードバックや採用面接を行い、帰宅後は深夜まで経営会議や取締役会の準備をする日々。組織のレイヤーを整え、会議の目的を明確にし、KPIを設定し、経営指標進捗の確認を毎日行う。少しずつ会社の体をなしていくランサーズは成長期の子供の様に変化していった。
経営会議参加者が責任と権限を明確に持ち、取締役会で事業論点をアジェンダにできるようになった頃、メンバーには詳細を伝えぬまま、秋好さんとBラウンドの資金調達を始めた。連日、VCや事業会社の経営層を訪ね、夢を語り、可能性を説明し、自らの計画にコミットした。往訪後の帰りにバーで飲みながら、二人でその日の手ごたえを確認したり、不安を吐露したり、実現したい夢を語ったりという機会が幾度かあった。それはまさに開戦前夜という時間だった。
目標達成力
素晴しい株主や経営陣に恵まれ、理想的な仲間も増えた。また、当時のベンチャー界隈は、秋好さんと同世代の経営者が、それぞれの領域で大きなビジョンを掲げており、まさに群雄割拠という状態だった。そんな時代の真ん中で、ランサーズというチームで圧倒的大義にチャレンジできることに幸せを感じていた。
ここからランサーズは、調達キャッシュを投じて、事業と組織を一気に拡大していく。意図的に時計の針を早めるのは、自然の摂理に反しているような背徳感があったが、それでもやりきる覚悟を持って臨んだ。毎月新たなメンバーを迎え、組織を変更し、未経験の業務を無茶ぶりし、成功と失敗が入り混じった感情を噛みしめるメンバーを横目に見つつも、感傷に浸る間も与えず走り続けた。ランサーズには、大義あるビジョンと、それに共感する気のいい仲間、そして秋好さん由来の"モノづくり、コトづくり、ストーリーづくり"といった様々な強みがあった。そんな中で、ぼくが補強すべきは、「目標達成力」だと考えていた。当時のメンバーは、あまりに多くのことを性急に要求され続けたと思し、思考では理解できても感情が追い付かない、そんな日常を強いられたと思う。あの日の経験が今のみんなにとって何らかのプラスに昇華してくれていればと思う。
関係性の質
急激な事業成長と引き換えに、ぼくはランサーズに二つの事態を引き起こしてしまう。一つは事業と管理の摩擦、もう一つは経営陣への重圧だ。上場を目指し、相応の予算を組み、成長を続けていく。その一方で、このままで本当に上場までやりきれるのか?事業以外の論点は十分に詰まっているのか?社会の公器たるランサーズの姿はこれでいいのか?こうした議論が増えていった。これまで、漠然と目標に向かって積み上げてきたものに、逆引きでの議論を求め、問いを突き付けるようになった。
それに対する秋好さんの答えは、現状のクラウドソーシング事業PLの延長線上にはなく、もっと"働き方を変えるインパクトのあるもの"だという。ここから、この抽象的な何かを探す旅をボードメンバーで始めることになる。それは経営上の立場を超えて、人としての感情、言語化される以前の思いを探るような時間だった。秋好さんの創業の思いを辿り、ボードメンバーの参画の覚悟を共有し、経営合宿では、いい歳したおっさんがみんなで涙し、外部研修にみんなで出かけ、経営コーチのサポートも受けた。
そんな暗中模索の末、少しづつ関係性を重視する文化が醸成されていった。それは次第に組織にも浸透し、充実した仕事をするためにも、まずは仲間との関係性の質を高めることを意識していく。事業なんて紆余曲折あるものなので、正義を戦わせて行動もなく、ただ関係性を悪化させるより、この仲間とならトライ&エラーの結果、多少遠回りしても成長の糧にできる!と思えるような関係性をつくる。「全員野球」という流行語が社内で生まれた。
社会の公器
機は熟しつつあった。社会の公器となるべく、その先の成長も踏まえて、どういう事業体、組織体であるべきかの議論が始まった。コーポレートブランドとサービスブランドの整理。新規事業や新設子会社、買収子会社の扱い。ぼくの管掌したQUANTもこのタイミングで100%子会社として新設し、二転三転あった結果、最終的にグリー傘下となるに至った。
2019年12月16日、上場セレモニー当日、東証はランサーズのメンバー、経営陣、株主、ランサーさん、OBとたくさんの人で溢れていた。東証的にも過去最大の参加者だそう。集まったみんなの温かい笑顔が印象的だった。秋好さんは周囲をこういう笑顔にさせる人だ。何よりもランサーズらしさを失うことなく、この日を迎えたことを嬉しく思った。思い起こせば、ランサーズ時代は葛藤の日々だった。成長を牽引する一方で、ランサーズらしさを潰しているのではないか?成長のために全力でやりたいが、組織を壊してしまうのではないか?「ゴジラのしっぽ」とあだ名されていた。地球のために戦っているが、背後の街は尻尾で崩壊していると。
今年、東証マザーズへの上場企業数は過去最多となった。この数年、ベンチャーとして事業をつくってきた各社が2020年という節目を前に次のフェーズへ進むことを選んだ結果だ。今回の企画で語られたランサーズOBによる回顧録は、きっと多くのベンチャーにとって、ありふれた日常なんじゃないかと思う。ランサーズと同時代を生きたベンチャーの多くも、今年上場し、各業界での活躍を期待されている。近い将来、国内で何度目かのベンチャーの大きなうねりと言われることになるだろう。きっとこの先、これらの会社が日本の景色を変えていく。そして、おそらく新たなうねりもすでにどこかで起きているはずだ。これからも、人づてにベンチャーという経験が受け継がれ、起業家の思いと融合し、新たな可能性を生み出していくのだと思う。
ランサーズがビジョンに掲げた就労課題の解決は、まさにこれからが本番。いまや働き方の多様化は、多くの企業で経営論点になっており、就労にまつわる将来について多くの人が期待や不安を抱えていると思う。そんな中で、ランサーズがどんな未来を描き、社会をリードしていくのかが本当に楽しみだ。
あらためて、秋好さん、ランサーズのみんな
上場おめでとう!
ここまでおつかれさま!
そして、ここから頑張って!!
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