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漫画感想 「作りたい女と食べたい女」を読んで
今、私は幸せなのだろうか。
一緒にいる家族を幸せにしているのだろうか。
そんなことを考えた作品でした。
NHK総合夜ドラで2シーズンにわたり放送された人気ドラマ「作りたい女と食べたい女」の原作漫画を読みました。
美味しいものを美味しく、大切な人と一緒に食べる。
そんな日常に幸せを感じ、大切にする二人を描きながら、レズビアンをメインにセクシャルマイノリティをはじめ、女性を取り巻く社会のさまざまな偏見を問う作品だと、ドラマを見た時は感じました。
けれど、原作漫画の印象は少し違いました。
ドラマは原作にとても忠実でしたが、私は、原作はもっと人にとって根本的に大切なことをテーマにしているように感じました。
それは『受け容れる』
自分を受け容れる。
他者を受け容れる。
違いを受け容れる。
いつからか、みんなと違うことは良くないことだから隠した方が良い。
また、みんなと違う人は「普通」じゃない人。
無意識レベルでそう思い込んでいることに気が付かせてくれる作品でした。
自分を受け容れる
子供が生まれて、新生児から幼児へと育っていくのを側で見ていると気づくことがあります。
人が外の世界を認識して広げていく時、工程があること。
自分の存在を認識→自分と他者の誰か個人を認識→自分と大勢の他者を認識してコミュニケーションを知る
要は、世界は自分だけと思いきや、成長と共にたくさんのお友達がいたことに気がつくわけです。
世界のはじまりは自分
まだ娘が寝返りもできない頃、仰向けで自分の手をジッと真剣に見つめたり、手をヨダレだらけにしていたことがあります。
育児番組によると、これはどうやら、自分の手の存在を発見していたらしいです。
![](https://assets.st-note.com/img/1725180832544-M8epjjnTZe.jpg?width=1200)
人はまず、自分を知ることからはじまるのだと、私は子育てをして知りました。
自分を知り受け容れる。そして次に自分以外の人に意識が向けられ、人を受け容れられるようになる。
「作りたい女と食べたい女」でもまず、主人公の野本さんが、春日さんとの出会いときっかけに、自分の純粋に料理が好き、そしてそれは誰かの妻になるためでも母になるためでもないことを知り、認識する。そして、思春期に抱いたセクシャルの違和感に向き合うことからはじめます。
春日さんもまた、居心地の悪い家族に抑圧されることから逃げるばかりでなく、居心地の悪い理由を明確にして、それを認識して野本さんに伝え、自分の「家族」を見つけます。
今まで生きていて感じた違和感や負の感情には自分を知るヒントが隠されていること。そして、それと向き合って自分を受け容れることができた時、人を受容できる人間になる準備ができるのかもしれません。
他者を受け容れ世界が広がる
娘は1歳半ごろから自己主張をし始め、2歳頃に自己主張のピークとなり、所謂「イヤイヤ期」、イヤイヤ期くらいはまだ、お友達に興味はあっても一緒に遊ぶことは少ない。そして3歳ごろからお友達の名前を積極的に覚え、一緒に遊ぶことも増えてました。
育児番組によると、自己から他者への興味が広がったらしい。
因みにイヤイヤ期とは、自分を認識してそれを親に伝えたくて必死になるけど、言葉もカタコトでうまく伝えられないフラストレーションらしい。
人は自己を受け容れるために、自己主張をして受け容れが済むと他者へ興味を持ち始め、自分とは違う人を受け容れることができる。
野本さんと春日さんも、それぞれ自分の生きづらさを、二人が出会ったことをキッカケに自認して掘り下げて行く。そして少しずつお互いの違いや過去を伝え合いながら、お互いを受け容れて関係を深めていく。
そんな二人の姿に私は人と繋がる心地よさや楽しさ、また安堵感を思い出しました。羨ましいとも思いました。
大変そうだけど、幸せそうな二人
出会って関係を深めていく中で、セクシャルマイノリティへの社会の偏見や異性のカップルが中心になって社会は整えられていることで、苦難にぶつかる二人が描かれています。
そのことに悲観し涙を流したり、深く落ち込む二人を見ていると心が痛むのですが、この二人ならきっと乗り越えられる。なんだかんだで幸せな二人を感じます。
二人はお互いの悲しみを分け合い、受け止めます。そしてまた二人で立ち上がり、生きづらい社会に絶望せず、人に助けてもらいながら前進して二人の居場所を見つけます。
自分を受け容れ、また自分を受け容れてくれる人がいる、そして相手を受け容れられた二人は、心身の絶対的な安全基地を持てたのではないでしょうか。
帰る場所があるから、仕事が頑張れたり、旅行が楽しめるように、自分の安全な居場所を得た二人は社会に希望をもち、前進できたのではないでしょうか。
美味しいものと幸せ
「ねえ、野本さん」
「はい?」
「まだ問題は残っているし、食べ物に直接問題を解決する力はないけど・・・、少しだけ・・・、前を向いて考える力を与えてくれますね」
美味しいものを食べて美味しいと感じられた時、人は皆、幸せを感じます。
「作りたい女と食べたい女」
このタイトルから想像できる通り、美味しいものがたくさん出てくるグルメ漫画です。
全ての人に共感できるであろう美味しいと感じる幸せ。
そして、それを通じて見えるそれぞれの幸せの形。
たくさんの美味しいものとたくさんの幸せの形を発見できる漫画でした。