「従業員同士が仲良し」という報酬に支払うコストは高い

殺伐とした会社が好きという人は少ない。

誰だって、温かい人間関係の中にいたほうが安心だ。

しかし、会社においては、人間関係は3大報酬のひとつであるため、無自覚に飛びつくと痛い目をみる(想定外のコストを支払う)ことがある。

ちなみに、3大報酬は

  • 金銭的報酬

  • 人間関係

  • 理念への共感

の3つだ。

給料がいいから働く、人間関係がいいから働く、この会社は発展途上国の労働者の賃金引き上げのために努力しているから働く、というわけだ。

おおむね、人はこの3つ中のいずれかに魅力を感じ、働いている。

逆に、この3つのいずれにも魅力を感じない就職は、いわゆる腰掛けであり、退職を予定したうえでの割り切った就職である。

さて、経営者からこの報酬を見ると、これらはすべて人事戦略上デザインすべき課題だ。

というか、ふつうデザインされている。

何のために?

採用マーケティングのためだ。

金のためなら何だってやるプルデンシャリズミックモンスターみたいな人を採用したいなら、

  • 金銭的報酬 10

  • 人間関係 0

  • 理念への共感 0

でいい。採用広告も、「結果を出せば年収3,000万も可能」みたいなわかりやすいものでいい。

一方、途上国の賃金アップのためにビジネスを営んでいる会社は、その社会貢献活動のPRに力を入れるべきだ。

給料は安くてもいい。給料が安いかわりに、その分途上国の人たちに分配されているくらいのほうがいい。給料日に現地の人たちの生活がこれだけ向上しましたというレポートが届くほうが、ボーナスが5万円増えるよりも重要だ。

  • 金銭的報酬 1

  • 人間関係 2

  • 理念への共感 7

くらいがいいだろう。

さて、ここからが本題だ。

人間関係報酬に力を入れる企業は、どんな企業だろうか?

  • 金銭的報酬 1

  • 人間関係 8

  • 理念への共感 1

基本的に、金銭的報酬は高ければ高いほど優秀な人を採用しやすいので、本気で採用したければ上げればよい。

にもかかわらず、金銭的報酬が低い場合は以下の2つのケースが考えられる。

  1. 予算がない

  2. 社内規程上、上げられない

1つ目はわかりやすい。儲かっていないのだ。

2つ目は、要は社内で足並みを揃えなければいけないということだ。

既存の社員が安い給料で働いているから、あなただけ高くするわけにはいかないということだ。

次に理念を見てみよう。

こういう会社の理念は、後付けがほとんどだ。別に理念なんかないけど、会社が大きくなるにしたがってカッコがつかないから考えた。というケースだ。

だから、高尚な四字熟語だったり、何とでもいえるような(最悪何もしなくても実現できたことにしてしまえそうな)抽象表現になっていることが多い。

「世の中の当たり前を疑う」とか「お客様から求められる会社へ」とか。

これはホームページを見ればすぐにわかる。

本気で社会的に意義のあるテーマを掲げて取り組んでいる会社は、ホームページやプレスリリースに活動報告が満載だからだ。

形だけの会社は、5年間更新されていない「企業理念」という固定ページがあるだけで、理念に基づいた活動をした形跡はない。

では、このように、給料も安い、理念はないという会社で働きたい人などいるのだろうか?

経営者は、何を報酬にすれば人を集められるのだろうか?

そう。

ここで登場するのが、「人間関係」という報酬だ。

人間関係という報酬は、経営者にとってめちゃくちゃ低コストな武器なのだ。

なにせ、時間も金もかからない。

積極的に飲み会を開いたり、交流イベントを開催したり、悩みを聞いたりするよう管理職やリーダーに指導するだけでよい。

たったこれだけで、「人間関係」という報酬に反応してしまう層(精神的に他者に依存しやすい人が多い)を入れ食いで釣り上げることができる。

これは裏を返せば、今働いている会社が「アットホームな人間関係」「社員同士プライベートで遊ぶほど仲良し」と謳っている場合、それ以外に「売りとなる魅力」がない可能性がある。

一度冷静に、今働いている会社は人間関係がクソだったとしても別の魅力が残るか確認してほしい。

なぜなら、人間関係しか売りがない会社では、「儲けるノウハウがない」「取り組みたいテーマがない」のだから、本来身につけられるはずだったビジネススキルが身につかず、茹でガエル状態になるからだ。

そして、仲良し人間関係の会社には、ウソのような鉄則がある。

ある意味当然だが、「人間関係が第一」となっていることだ。

これは、心理的安全性が低い組織の特徴でもある。

人間関係第一の組織で働く人間は、笑っちゃうほど打たれ弱い。反論を人格否定だと捉える人が多い。

なぜなら、普段「みんなで仲良く同じ意見」「何を言っても賛同される」世界線で生きているので、ふつうの反論にも過剰反応してしまうのだ。

私も一度、「かずさんが肯定しないから心理的安全性が下がってますよ」という、思わず耳を疑うような指摘を受けたことがある。

心理的安全性とは?
おそらく、「何を言っても肯定してもらえること」だと思っているのだろう。

といったように、会議は無意味で、議論の質は低く、いい会社に就職したら1年で身につけられる基礎スキルを、5年目になっても身に着けられない。

私には、不幸な選択に思えてならない。

これが、「仲良し人間関係」に飛びついてしまう人が支払う人生のコストだ。

知らんけど。

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