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あなたの渾身の一句を講評します④

沙々杯審査員が、あなたの渾身の一句を講評する企画。

私も素人で、ポイントのズレた指摘をしている可能性大。感性も多分に盛り込まれているので、鵜呑みにしないで大丈夫。


冬兆しヒュッゲな家のキャンドルよ
華彩りさん

ヒュッゲ=デンマーク語で「居心地がいい空間」「楽しい時間」。北欧の(または北欧風の)家であることの強調でしょうか。ドイツに住んでいたことがあり、なんとなくですが情景が浮かびます。暗く厳しい冬にあって、「キャンドル」は安寧、静謐や、クリスマスへ向かう高揚感と結びついたポジティブな印象の言葉。「冬兆す」と対比的で良いと思います。
「ヒュッゲな家のキャンドル」の柔らかさに続く「よ」に、唐突感のある固さを感じました。「よ」は念押し感、確信感を伴う強い語尾なので、柔らかな気分が損なわれるのではないかと。
字余りですが、語尾を弱めてみました。
 冬兆しヒュッゲな家にキャンドル灯す
 冬兆しヒュッゲな家にキャンドル灯る
どちらも厳しさの中の安寧を表現しているのではないでしょうか。「家」は、建物と戸内の両方の意味を持ち、家の内外どちらからの視点かがわかりにくいです。別の言葉を探してみました。
 冬兆しヒュッゲな部屋にキャンドル灯す
 冬兆しヒュッゲな館にキャンドル灯る
前者は主観叙情的、後者は客観写実的と思います。


有明の空を集めよ実むらさき
白さん

「有明の空」と「実むらさき」。両者の色を対比させて、「実むらさき」の鮮烈な紫色を強調したいと読みました。「空」という広い空間を、小さな「実」の中に封じ込めよ、とも読めますが、こちらは意味が通りにくい。空の雄大さ、実むらさきの鮮烈さを両方言うのは欲張りすぎの気がします。素直に色だけに集中するのが分かりよいかと。
 有明の碧を集めよ実むらさき
もう少し踏み込んでみます。漆黒から紺碧に変わっていく有明の空色を念頭におくと、空から集めるよりも、空に染み出す方が動的で詩的な印象が出るように思います。色の濃縮ではなく拡散。
 有明を真青まさおに染めよ実むらさき


大歳に祓い清めの宝くじ
ありっちさん

宝くじをどうしたのかがわからないので、大晦日が年末ジャンボの当選発表日と知らない人は、宝くじ買ったの?となるかなと思いました。また、「祓い清め」は、発表前の願掛けなのか、発表後の落胆(厄落とし)なのかわかりづらいです。聖俗を組み合わせたユーモアが伝わりにくく、もったいないなと思いました。
私も、モチーフや言葉がどの程度社会通念、共通認識として通用するのか悩むことが多々あります。難しいところですが、出来るだけ多くの人を拾いあげたい。
 くじはずれ祓い清めの除夜参り
 富くじ手に一日早い初願い
前者がハズレ厄落としバージョン、後者が願掛けバージョン。年末ジャンボを知らない人も知らないなりに解釈可能、知ってる人にはピンとくると思います。


【①〜③】

【本番 沙々杯概要】




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かっちー
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