【ライラック杯】かっちー賞発表【俳句】
季節あっての季語。季語以前に、春らしさとは何?をいつも考え直すのだが、今回はますますわからんようになってきた。春って本当に難しい。
(1位)
春の蚊をじっと眺めて日が暮れる
こたろうさん
桜や自然から「のどか」を強要される一方で、別れや新生活により心の中はわさわさ。そんなアンビバレントな季節を、蚊を眺めて日がな過ごす。超然として美しいなと思いました。「じっと」の静的な響きが、動的な季節「春」と対照的で、心に染みます。
(2位)
春光のラストピースとしての僕
うつスピ
先陣を切るのではなく、しんがり=ラストピースであるところがよいと思いました。お膳立ては揃っていて、「ラストピースとしての僕」がはまれば「春」が仕上がる。「はまりに行かなきゃ」という焦りのようでもあり、「はまりに行くぞ」という覚悟のようでもあり。心の揺れが伝わるようです。
(3位)
さえずれど緋色の空や星ひとつ
せきぞう、さん
夜が明けきるのを待ちきれず、フライング気味にさえずる一羽の鳥。夜の孤独に耐えかねたかのようです。さえずりに応えてくれる仲間はおらず、「緋色の空」にはまだ星が。今しばらく、手持ち無沙汰な一人の時間を過ごすのでしょう。余韻が美しく、浮遊感があり素敵です。
(4位)
春の風纏い闘う十六歳
泥棒猫/ing ing ing
漠とした不安感と格闘していた高二頃の出来事って、強烈に心に残っています。記事を読むと、おそらく私と同い年。バブル絶頂の傍ら、チェルノブイリ事故やアイドル歌手の自殺など、経済発展の先にある闇を暗示するような事件が起こっていたのでした。祖父母世代、両親世代、娘世代…課題は違えど、それぞれの世代の高ニが時代の宿痾を背負って闘っていると思うのです。春の風を纏いながら。
(5位)
前髪を抑える君や春爛漫
千求麻也
中学の制服に初めて袖を通した幼馴染を思い出しました。まだ馴染まない髪型、少しサイズの合わない制服。自分でもそれを受け入れるのに少し時間がかかりそう。そんなぎこちなさをも受け入れてくれそうな「春爛漫」の包容力と存在感。キュンとしたのです。
(6位)
春note君の青さにスキひとつ
ぶどう
若い人のnoteを読んでると、私の過去の悩みに今まさに格闘していたりする。私が過去にした失敗を、今まさに犯そうとしている人も。「大丈夫。時間が解決するから」と心の中でつぶやきつつも、コメントは書かずにスキだけ押して立ち去ることが多い。この春デビューの若いnoterさんたちにエールを送ります。
(以下B句)
春雷や自己決定の幸福論
すうぷ
「春雷の」がよいです。色々と理屈を考えるより、衝動に任せた方が良い結果を生むことが多い。何より大切なのは「自分が決めたんだ」と思えること。今の私の気分にぴったり寄り添ってくれたのです。ありがとう。
超スピード竜天に登り交戦
セブンソード
「龍天に昇る」中国の伝説に基づいた、カッコいい春の季語です。小学生のセブンソード君が本季語を持ち出したことに感銘を受けました。昔の中国人と現代の小学生が、俳句を通じて繋がったと。もとの伝説を正しく踏まえているかは問題ではありません。むしろ現代ファンタジーに応用したところが素晴らしい。天に登る龍がカッコいいと思う感性は同じなんだなと。カッコいいです。
春泥に大跳躍の娘かな
花風
まだ雪溶けきらぬ田舎道、子供の心は先へ先へとはやります。「春泥」を飛び越えんとする様は、冬を乗り越えて幸せな季節を迎える喜びと同時に、子供の成長そのものへの喜びを表現しているようでもあります。眼差しが優しいです。
コンビニのおにぎりでいい春の海
ひろ生
なにを置いても春の海に向かいたい。「コンビニのおにぎりでいい」の表現が秀逸と思いました。穏やかな時間、穏やかな場所。あとは付け合わせでよいですよね。柔らかで素敵な句です。
姫すみれ夜明けにふうと蝶吐けり
めかぶ
美しいです。「ふうと」が姫すみれと蝶の関係性について想像を掻き立てます。蝶はすみれの中で一夜を過ごしたのでしょうか。すみれの気持ちは夜半にはどうで、夜明けにどう変化したのでしょうか。艶っぽいのです。
花まつり陽キャのブッダ降臨す
雪華
古事記の神様などは、とても人間味にあふれています。現代でもヒンディ教の神様などはとても人間との距離感が近い。インド旅行をしたときに、ゲストハウスの子供が、神様の像をウルトラマン人形のように戦わせていたのを思い出しました。教祖ごときが祭り上げられる宗教は偽物と思ってます。ブッダにもはじけたいときありますね。
いずれ劣らぬ力作399句からの12選でした。
普段は客観写生の句が好きなのですが、今回は抒情的な句をたくさん取りました。一般的には春らしくない句も取ったように思います。今の自分の心境を代表しているように思います。もう一回やると違う句が並ぶことでしょう。
ともあれ、
かっちー賞受賞のみなさん
おめでとうございました。
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