教員とエンジニアの交差点~アセスメントの大切さ~
元高校教諭、元/現エンジニア(サーバー技術者)というちょっと不思議な経歴で学習支援のNPOで常勤職員をやっています。
学習指導において重要だと思うのが、学習者の状況を適切に把握できているかどうかということです。集団授業だと、「わかりやすい教え方(指示)」をしているかどうかは、授業の評価に影響すると思いますが、個別指導(一対一)の形式の場合、重要なのは、誰にでもわかりやすい教え方で教えることよりも、どれだけその子にあった教え方ができるかだと思います。
その子にあった教え方 というのは、
〇 必要な基礎知識の理解度
〇 問題の本筋とは異なる知識・技能
〇 心理的状況
などの学習者の様々な状況をふまえた教え方です。当然、完璧に状況を読み取ることは不可能ですが、「文字式の計算は大丈夫そうだけど、速さ・時間・距離の理解が曖昧だし、文章の読み取りもうまくできていない。テストが近いからって焦っているな」など、ざっくりしたことは、個別指導であれば、把握されて当然だろうと思います。
そういった状況の認識をせずに、「この問題が分かりません」に対して、「あー、兄の後を弟が追いかけるやつねー」って、集団授業的に良い解説をしても、学習者に首をかしげられて終わることがあります。だって、問題文や速さについての理解が曖昧なまま、兄の後を弟が追いかける問題の解き方を聞いたところで、よくわからんですよ……。
だから、学習者が置かれている状況を適切に把握することが重要になってくるわけです。
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実は、これ、エンジニアとして働いていても同じようなことがあります。
「メールが送れないですけど’ー」
大体、困った人達は、何ができないかしか教えてくれません。これに対して突然、
「あーよくあるやつですよー、メールの設定を開いてみて下さい、アカウント名とパスワード間違っていませんか?」
なんて、回答をし始める輩は、多分いないと思います。まずは、原因を探る一手として
「画面にエラーメッセージは何か出ていますか」
「メールが送れないのはいつからですか」………
など、どうしてできないかを探る簡単な質問を始めるはずです。決して、
「コマンドプロンプトを開いて、telnetでサーバーと接続できるか確認してみてください」
なんて高度な要求はしないはずです。
また、内容の緊急性や重要度に応じては、根本解決を目指さず、回避策の提案で早期の復旧を目指すこともあります。
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根本解決ではなく回避策の提案をするというのは、学習指導だと……
テスト直前期に、なんとか試験で点数を取れるようにしないとならないけど、根本まで戻っていると時間がかかる。だから、「こういう実験を何というか」と聞かれたら「対照実験」と答えておけばいい、「どのような関係になっているか」と聞かれたら「比例の関係」と答えておけばいい
というような、差し迫った何かにだけ対応できる術を教えることが近いように思います。
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こんな感じで、学習指導にしろ、エンジニアとして課題解決をするにしろ、どちらも最終的には相手方が問題を解く(解決する)という点で、スムーズに問題を解いてもらえるためには、相手の状況を正しく把握する(アセスメント)が重要という点が共通しているなと、ふと思ったわけです。