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【学習支援の現場から】目的であり手段である学習支援

 2023年6月22日 北海道新聞 朝刊 第13面(くらし) の特集「願いはここに」に、Kacotamの代表が取り上げられた(WEB版も無料会員登録で読める)。

 Kacotam(カコタム)は、札幌市(北海道)を中心に、経済的理由や家庭環境等により十分な学習環境にない子ども・若者を対象に学習支援・居場所づくりをしている。

Kacotamの学習支援・居場所づくりを的確に説明するのはとても難しい

 ボランティアとして(途中から職員として)関わって88ヶ月目❗でも、「Kacotamって何しているの?」という問いに答えるのがとても難しい
 なるべく平易に伝えたいという気持ちと、なるべく正確に伝えたいという気持ちとの間での葛藤が毎回ある。

 毎年度、何か新しい取り組みが始まっていることの影響もあるけれども、なんとなく「学習支援」とか「居場所づくり」とかから平易に想像されるものから、大事にしていること(≒根っこの部分)が若干ズレている気がしているからだ。
 実際には、根っこの部分が正確に言語化されているかはなんとも言えない。強いて言うならば、「カコタムらしさ」と呼ばれるものなのだろう。

 結果として最近は、「何をしているの?」の問いに対しては、「平易さ」を優先しつつ、「ちょっと、特徴があってですね」というところで補足してごまかしている。

  • 機会あるいは場を提供することをしている

  • 子どもの”あるべき姿”を定めていない

 といったことを補足しているが、どうも今ひとつ足りていない感が否めなかった。

 今回の新聞記事でも紹介されている、団体設立につながった代表のストーリーを紹介することで、さらなる補強を試みることもありつつも、どうも上手くまとまらないことが多い(斉藤の話術の問題か……)。

 そんなことを思っていた今日この頃、今回の新聞記事の中で紹介された一節がなんとなくぴしゃんときた。

「学習のサポートは、学びたい時には目的となり、気持ちを打ち明けたい時には手段になる」

 Kacotamに来る子の背景は様々で(コロナ禍以降、不登校関係の子との関わりが増えてきている気がする)、いわゆる「無料塾」のようなところを求めている層がいつつも、「居場所」のようなところを求めている層も少なくない。

 保護者等からの申込が必要な拠点型・訪問型の学習支援は、小学生・中学生・高校生とつながりを得る上で、「学習」という避けにくい目前の課題で、なんとなく多くの大人が「必要そう」と思ってくれるものとして、すごく強い。

 漠然とした「家だったり学校だったりが過ごしにくい場所だな」というときに、塾だったり習い事だったりがあれば、「それ以外の場所」が確保できる。

 一方で、「家に居たくない」から「塾に行こう」とか「習い事をしよう」などと考えに至る子どもらがどれほどいるだろうか。保護者はどうだろうか?
 そもそも、漠然とした「過ごしにくさ」を感じたり、解決をしようと動いたりというところにまで至ることがあるだろうか。

 「学習」をきっかけにすることが難しい子もいるから、万能ではないけれど、ある層には刺さっていくはずだ。

 「学習支援」の中で、信頼関係の糸を紡いでいくことで、いつしか「学習支援の場」は、「居場所」になっているように見えることが、Kacotamの現場ではしばしばある。

 最初は、保護者に行けと言われたから来て、黙々とワークをやったりやらなかったりだった子が、担当のメンバーとよく会話をするようになったり、近くの席だった共通の趣味を持つ子と会話をするようになったり……。
 そんなこんなで、気がつけば、学校や家の愚痴を終了時刻を過ぎてもメンバーとあーだこーだ話していたり、〇〇がやりたい!と話してくれて一緒にやってみたり、入試に向けて時間を惜しんでせっせと学習に取り組むようになったり……。

 単に勉強を教えるという学習支援ではなく、学習支援を通して、子どもひとり一人に寄り添っているのが、Kacotamの活動といえるかもしれない
 「学習のサポートは、学びたい時には目的となり、気持ちを打ち明けたい時には手段になる」は、そういうことを包括した一節な気がして、ぴしゃんときたのだろうと思われる。

「居場所づくり」≠「ゆるきち」

 2016年11月に開設した常設拠点「中高生のオープンスペースゆるきち」。居場所づくりというフレーズをよく使うようになったのは、ゆるきちができてからの印象だけれども、Kacotamの居場所づくりは、ゆるきちに限ったことではない。Kacotamという存在自体が、一つの居場所づくりになっている(はず)。

 ゆるきちは、「学習」をきっかけにすることが難しい子だったり、保護者からの申込が難しい家庭(保護者にいろいろな余裕がない家庭とか)の子だったりとの接点になることを狙ったものでもある。

結びにかえて

 社会全体でみれば、子ども・若者支援の取り組みは、行政によるもの民間によるものがいろいろとある。ただ、ひとり一人の子どもを取り巻く環境の中に、その子にとっての「楽しい学びの場」は、まだまだ担保されているとは言えないだろう。
 Kacotamは、すべての子ども・若者にまわりの環境に左右されないような楽しい学びの場を提供し、自己実現に向けて挑戦できる社会を目指して、これからも活動を深め、広げていく(はずだ)。


 Kacotamでは、活動の拡大と既存拠点の活動の安定化(&カイゼン)のために、常勤職員を新たに1名募集しています。いろんなチャレンジ・試行錯誤ができる組織です。

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Katsuya SAITO
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