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異語り 066 冬囲い

コトガタリ 066 フユガコイ

今年も玄関前の木に冬囲いをする。
もう10回以上やっているのでだいぶ慣れてきたと思う。
最初の頃はどうしていいのかさっぱりわからず、『冬囲い』の市民講座に参加したことがある。
講師はシルバー人材センターから派遣された方々。
支柱と縄を使った冬囲いを教えてもらった。

講義のあと少しおしゃべりをした時に元庭師のOさんから聞いた話


お子さんがいるなら冬囲いをする前にはよく足元を確認した方がいい。
生き物やらのお墓を作ってあるときがあるから。
なんでか子供はよく木の下に埋めるんだよ。
別にペットなんて飼ってなくたって、捕まえてきた虫やら、道で死んでたすずめやらをわざわざ拾ってきて埋めたりするからねえ。

仕事で公園の植え込みの冬囲いを請け負った時の話なんだけど、公園だと作業する数が多いんだよ。
次々やってかないと終わんないから、足元の確認なんかもだんだん適当になってきちゃう。
そん時もだいぶ数をこなして「さぁとっとと次」って思った時だった。
足の下で パキン って何かを踏み折っちゃった感触がしたんだ。
枯れ枝なんかと違って、なんていうか……折れたっていうより壊れちゃったような感触なわけ。
「うわっ、もしかして」と思ってみると、やっぱり人工的な創作物だった。
字とかはもう読めないんだけど、ああいうのって雰囲気はちゃんとあるんだよね。
でもまあどうしようもないからさ、折れちゃった棒切れを地面に刺し直して、ちょこっと手を合わせて作業を再開したのさ。

支柱を束ねて、飛び出し気味の枝を押さえながら荒縄で巻き上げていくんだけど……、
木の向こう側に縄を回そうとした時に、近付いた瞬間に パチン と縄が切れてね。
押さえてた枝が思いっきり顔面にヒット! もうちょっとずれてたら目がヤバかったんだ、本当にギリギリの所だったんだよ。

まぁ、作業中ならよくある話なんだけどさ、でも新品の縄が切れる。なんてのはあの時だけだったな。
普段から注意は必要。
特に足元はしっかり確認した方がいいぞ。


我が家の木の下にはお墓はないが、実は祖父母の遺灰が蒔かれている。
以前両親が遊びに来た後に、父から「蒔いといたから」と事後報告された。
骨ならすぐに見つけられそうだが、少量の灰は探しようもない。

毎年この木だけ冬囲いをする(落雪を被ることがあるので)
ときどき根元に踏み込んでしまうこともあるが、まだ枝で弾かれたことはない。

でも毎回木に抱きつくようにして縄を回していると、少し乾いた埃臭い匂いを感じる。
冬の屋外には似つかわしくない匂い。
でも私にとっては懐かしい祖父母の家のサンルーム匂いでもある。

灰があるからここに残されてしまったのか。
灰があるからここに遊びにこれるのか。

できれば後者であればいいなぁと思いつつ、そのにおいを閉じ込めるようにネットで枝を包んでいく。


今年は初雪が遅いけど、冬の準備はほぼ完了。
さあ来い冬将軍!

あ、でもお手柔らかに願います。

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異語り 夏瓜(かか)
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