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異語り 150 伝言

コトガタリ 150 デンゴン

30代 女性

ふと妙なことを思い出した。
思い出したというのは少し違うかもしれない。
思いついた?
気がつくと記憶として覚えていた? かな

なぜかその前後のことは全く覚えておらず、ポツンとその記憶だけがある。
長い映画の途中に唐突に無関係なCMが一つ挟まったような感じ、と言えば伝わるだろうか?


どこかの公園か庭のような場所を背景として女の人が話しかけてくる。
その女の人に見覚えはない。
もちろん背景の景色にも見覚えはない。

女の人は20代から30代ぐらいの小柄な人。
肩下ぐらいの少しクセのある髪で、脱色や染髪はしていなさそうだ。
顔もこれといった特徴がなく、少しタレ目気味で丸っこい鼻。
小鼻の右に小さなほくろが一つ。
全く知らない人だった。

紹介されたり、挨拶された記憶はなく、いきなり目の前で話しかけてくる記憶だけがある。


女の人はこちらを見つめ、ゆっくりと言葉をつむぐ。
笑顔ではないが、緊張感や圧迫感もない。
子供に言い聞かせるようにまっすぐ見つめながらゆっくりと一言ずつ
同じ言葉を繰り返している。

聞いているらしい自分も小さく頷きつつその女の人を見つめている。




ただ、その女の人の言っていた言葉が思い出せない。

ゆっくりと動く口元ははっきりと覚えているのに、そこから発せられた言葉を全く覚えていない。

もしかして声が出ていなかったのか?
記憶では話しかけてきたと覚えているのだから、多分声も聞いているはず。

でも思い出せない。



何を言っているんだろう?
読唇術なんてやったことはないけれど、聞き取るために他に方法はなさそう。

だから一生懸命その口の動きを思い出す。



にいなに……つたえて

伝えて?
誰かへの伝言だろうか

……とじまり ……ひのもと ……すいせいけん?

戸締り火の元…… 火の用心か? 彗星券? もしくは次へ行けんかな



何となくこう言ってるのかな? というレベルでしか読み取れない。
1度でも【これか?】と思ってしまうと他の言葉が思いつかなくなってしまう。

ああ、この記憶をみんなにも見せれればいいのに。



にいなに伝えて、戸締り火の元彗星券(もしくは次へ行けん)

にいなさん宛ての伝言かな?
じゃあ、なぜ私に?


どうしていいのかわからないので、
聞いてくれそうな人に話して回っています。
どうか、伝えたい人に伝わりますように。

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異語り 夏瓜(かか)
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