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異語り 156 UFO

コトガタリ 156 ユーフォー

昔 UFOをみたことがある。
宇宙船とかタイムマシーンとかいろんな説があるけれど、未だに自分がみた物が何だったのかよくわからない。
まさに未確認飛行物体。

たしか10歳か11歳頃だったと思う。
世間はオカルトブームで『あなたの知らない世界』や『○○探検隊』なんて番組がいっぱい溢れていた。

世の中がそんな空気だったからか、意外と変な物が受け入れられ易かったように思う。 
実家のマンションからも時々 変な光る物体を目撃していた。
飛行機や人工衛星のように移動せず、時々分裂する発光体。
母も騒ぎながら写真を撮ったりしていたけれど、遙か遠くの小さな光の粒なので写真はただの風景写真になっていた。

自分が目撃したのはもっとくっきりはっきりした物
でも写真や動画は残ってない。
当時は子どもが気軽に使えるカメラもビデオをまだなかった。

セミの声と半袖だった事を覚えているから夏の夕方。
まだ陽は沈んではいないけれど暑さがだいぶ引いた頃。
同じマンションに住んでいた一つ下の友達と屋上で遊んでいた。
その時は自分の弟も友達の妹もおらず、2人だけだったと思う。

けっこう長い時間遊んだ後で屋上の地べたに寝転がってお喋りしていた。
そんな屋上の上を何かがふわふわと近づいてくる。
自分たちからみて15メートルか20メートルくらい上
何かを投げたり、長い棒を伸ばしても届かないけれど
ある程度の模様や変化がわかるくらいの距離をゆっくりと横移動してくる。

最初は誰かが飛ばした風船かと思った。
でも紐などはついてない。

横移動というか、横方向に転がるように移動している。
白と黒のしましまの浮き輪に赤白のモンスターボールをはめたみたいな形
赤い部分がじんわり点滅していた。

それが
コロコロコロコロ
空を転がってくる。

大きさはソフトボールくらいに感じた。
距離をかんがえたらどれくらいだろう?
それでも小さめだった気がする。

「ねえ、あれなんだろ」
「……なんだろ」

友達もちゃんと見えているみたいだった。
ゆっくりと自分たちの上を通り過ぎ、さらに転がっていく。

あまりにも不思議で恐怖心は全くなかった。
もっとしっかり見ようと二人して体をおこすと、
その物体が一瞬ブルンッと震え


消えた


慌てて周りの空を探したけれど、それらしい物体は見当たらない。


二人して顔を見合わせると不意に辺りが暗くなった気がした。
いつの間にか日が沈んでいる。


なんだか急に怖くなって、一言も話さずにすぐにマンションの中に駆け込んだ。


「UFOを見た!」
と、言い回りたい気持ちもあったけれど、なんとなく2人とも人には話さなかった。
でも、自分の見た物が何だったのかはとても気になった。

ノートや落書き帳に絵や説明を書き、2人だけの時に確認し合ってた。
いまでもまだ気になってる。

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異語り 夏瓜(かか)
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