【企業分析】KDDI
9433 (東証プライム)
時価総額: 9.37兆円
株価: 4,000円
売上高: 5.4兆円
営業利益: 1.1兆円
(2022年)
事業内容: 情報・通信
設立年:1984年
本社: 日本🇯🇵東京都千代田区飯田橋
代表者: 髙橋 誠 (代表取締役社長)
従業員数: 48,800人
主要株主: 京セラ15.1%、トヨタ自動車14.3%
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概要
au(エーユー)」ブランドを中心とした携帯電話事業などを手掛ける日本の大手電気通信事業者。本社は東京都千代田区飯田橋。日経平均株価およびTOPIX Core30、JPX日経インデックス400の構成銘柄の一つ
プロダクト・ビジネスモデル
KDDIグループは2020年3月期より、「パーソナル」「ビジネス」の2つのセグメントに構成を変更し、事業を展開しています。
持続的な利益成長と社会の持続的成長に貢献する会社を目指し、以下7つの事業戦略に注力しています。
5G時代に向けたイノベーションの創出
通信とライフデザインの融合
グローバル事業のさらなる拡大
ビッグデータの活用
金融事業の拡大
グループとしての成長
サステナビリティ
パーソナルセグメント
パーソナルセグメントでは、個人のお客さま向けにサービスを提供しています。
日本国内においては、従来の通信サービス (主に「au」ブランドによるスマートフォン・携帯電話、FTTH/CATVサービス等) を中心に、コマース・金融・エネルギー・エンターテインメント・教育などのライフデザインサービスを連携しながら拡充することで、新たな体験価値の提供を目指しています。
また、海外においては、国内で培った事業ノウハウを生かし、ミャンマーやモンゴルをはじめとするアジア地域を中心とした個人のお客さま向けビジネスにも積極的に取り組んでいます。
パーソナルセグメント業績
ビジネスセグメント
ビジネスセグメントでは、日本国内および海外において、幅広い法人のお客さま向けに、スマートフォンなどのデバイス、ネットワーク・クラウドなどの多様なソリューションに加え、「TELEHOUSE」ブランドでのデータセンターサービスなどを提供しています。
さらに、5GやIoTなどの技術を活用し、パートナー企業との連携により、グローバル規模でお客さまのビジネスの発展・拡大に貢献するソリューションをワンストップで提供することで、お客さまと共にDXを通じて新たな価値を創造しています。
また、日本国内の中小企業のお客さまについては、連結子会社のKDDIまとめてオフィスグループによる地域に密着したサポート体制を全国規模で実現しています。
ビジネスセグメント業績
2020年度のKDDIのセグメント別売上高構成比は、下記のようになっています。
個人のお客さまに向けたサービス展開(パーソナルセグメント)が、全体の売上高の約8割を占めており、KDDIのメイン事業になっています。
パーソナルセグメントでは、通信サービスを中心に、コマース・金融・エネルギー・エンターテインメント・教育等のライフデザインサービスを連携しながら拡充しています。2021年3月に新料金ブランド「povo」を開始しました。
一方で、ビジネスセグメントでは、5GやIoTなどの技術を活用しながら、グローバル規模でお客さまのDXを支援しています。
市場動向
通信業界の動向と現状(2021-2022年)
近年の通信業界は横ばいで推移 頭打ち状態が続く
財務省の法人企業統計によると、2021年度の情報通信業の売上高は、前年比3.4%増の79兆9,813億円でした。
情報通信業の売上高の推移を見ますと、過去5年間はおおむね横ばいで推移しています。2020年度は若干の減少となりましたが、21年度には増加に転じています。コロナの影響も軽微であったと言えるでしょう。
続いて2021-2022年の通信業界の動向を、携帯電話とテレビ業界に分けて分析していきます。
2021-2022年の携帯電話業界は前年に比べて、横ばい傾向にありました。大手3社による携帯電話の低価格プランが一斉にスタートし、顧客基盤の拡大につながっています。今後は「5G」特需が期待されますが、本格的な普及にはもうしばらく時間がかかりそうです。
近年の携帯電話業界は、政府による「携帯電話料金の値下げ」要請を受け、各社、料金プランを一斉に引き下げました。大手キャリア3社は『ahamo』や『povo』、『LINEMO』といったネット申し込みサービスを展開しており、従来にない低価格プランを展開しています。2020年4月には「楽天モバイル」が参入してくるなど、業界に新たな動きが見られましたが、新規参入の楽天はいまのところ苦戦を強いられています。
2021-2022年の通信業界売上高ランキングを見ますと、首位がNTT、2位がソフトバンクグループ、3位がKDDIとなっています。
2021-2022は、大手通信会社5社中4社が横ばい、1社が増加となりました。業界全体としても横ばいで推移しています。
競合他者
私たちの生活に欠かせない通信インフラを支えているのが、大手キャリア4社のKDDI・ソフトバンク・NTTドコモ・楽天です。この4社を売上高で比較すると、KDDIは第1位の業績です。
携帯電話業界の動向と現状(2021-2022年)
2021年の携帯電話大手3社の業績は横ばい 契約数者増も単価減少へ
続いて、企業ごとの動向を見ていきます。以下のグラフは携帯電話大手3社の売上高の推移を示したものです。
グラフを見ますと、全体的にはほぼ横ばい傾向にあることが分かります。最近の動向としては、NTTドコモとソフトバンクが横ばいなのに対し、KDDIは増加傾向にあります。特に直近はNTTドコモが減少しているのに対し、KDDIが増加していることから、今後、ランキングの入れ替えが起きる可能性もあります。
2021年-2022年の携帯電話業界は、大手3社による携帯電話の低価格プランが一斉にスタートした年でした。新料金プランによる一時的に契約者数の減少がみられたものの、顧客ニーズに合わせた新料金プランが功を奏し契約数が増加、顧客基盤の拡大を図ることができました。
一方、契約数は増加したものの通信量の値下げが響き一人当たりの単価が減少、収益に影響を及ぼしています。通信料金の減少を法人事業や成長事業がカバーする状況となっています。
2021年の携帯電話業界のランキングを見ますと、首位がNTTドコモ、2位がKDDI、ソフトバンク、沖縄セルラーと続きます。
携帯電話最大手のNTTドコモは、2020年12月にNTTの完全子会社となりました。モバイルを柱とした経営から事業領域の拡大を図っており、2021年7月に新体制をスターさせています。2位のKDDIは携帯電話事業を担うパーソナル事業の売上高が約85%を占めますが、近年はエネルギーや金融などの非通信事業を伸ばしています。
2021-2022年の携帯電話業界の業績は、4社中1社が微増、3社が微減となっており、概ね4社ともに前年から横ばいで推移しています。
大手3社『格安プラン』一斉スタート、顧客獲得に向け競争激化
近年の携帯電話業界においてはスマートフォン需要の一服感が漂っており、以前のような爆発的な販売数も見込めず、停滞期に突入しています。
このような状況下で近年注目されているのが、大手3社展開の『格安プラン』です。菅政権による「携帯料金の値下げ」要請を受け、各社は2021年の春から割安な料金プランをオンラインで一斉にスタートさました。
NTTドコモでは、低価格プラン『ahamo』を2021年3月26日に開始しています。契約者数は開始約1か月で100万人を突破し、そのうち約半数が30代以下でした。基本料金は2,700円と1プランのみで5分以内の国内音声通話を無料としています。
KDDIは同年3月21日に『povo(ポヴォ)』を展開しました。基本料金2,480円にオプションと呼ばれる「トッピング」を適用するスタイルです。さらに、同年9月には基本料0円を開始し、10種類の有料トッピングを組み合わせるプランで、利用者ニーズに応じた料金設定を可能にしています。
ソフトバンクも2021年3月17日に『LINEMO(ラインモ)』をスタートしました。基本料金は2,480円とし、20GBに加えLINE使い放題の「LINEギガフリー」を謳っています。さらに、同年7月には基本料金900円の「ミニプラン」を始めました。
いずれも、各社ともに若者をターゲットにした今までにない、低価格プランを可能にしました。スタート時は横並びでしたが、徐々に新プランを発表するなど、特色を見せ始めています。
近年、停滞気味の携帯電話業界でしたが、低価格プランや顧客獲得に向けた競争の激化で、流れが変わりました。また、2020年4月には『楽天モバイル』が参入しています。現在のシェアは2.4%(22年6月時点)と規模は小さいですが、2021年10月には『5G』でJTOWERと提携、2022年6月には「0円」プランを廃止し、同年7月から新料金プランをスタートさせるなど事業の拡大を図っています。今後の携帯電話業界業界の動向に注目です。
業績
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は5兆3,126億円と、前年度比+1.4%、過去5年間で年率+3.5%となりました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・パーソナル:4兆5,851億円、前年度比+1%
・ビジネス:9,916億円、前年度比+5%
・その他:783億円、前年度比▲3%
セグメント別の売上高構成比は、パーソナルが82%、ビジネスが17%、その他が1%を占めます。
2021年3月末のau契約数は2,345万(前年度比▲3%)、UQ mobile+MVNO契約数は392万(前年度比+28%)となりました。
FY2020のライフデザイン領域の売上高は1兆3,050億円(前年度比+9%、売上高全体に占める比率25%)、営業利益は1,980億円(前年度比+11%、営業利益全体に占める比率19%)となりました。
2021年3月末のau Payカード会員数は650万(前年度比+20%)、auスマートパスプレミアムは1,137万(前年度比+18%)、auでんき等契約数は288万(前年度比+16%)となりました。
FY2020の決済/金融取扱高は9.01兆円(前年度比+38%)となりました。
利益(セグメント別)の推移
FY2020の営業利益は1兆0,374億円と、前年度比+1.2%、過去5年間で年率+4.5%となりました。
営業利益率は19.5%と、前年度の19.6%とほぼ同水準となりました。
FY2020のEBITDAは1兆7,862億円と、前年度比+2.0%、過去5年間で年率+4.8%となりました。
セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。
FY2020のEPSは284円と、前年度比+3.1%、過去5年間で年率+7.5%となりました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは1兆6,822億円と、前年度比+27.1%、過去5年間で年率+13.7%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は31.7%と、前年度の25.3%から改善しました。
FY2020のフリーキャッシュフローは1兆0,575億円と、前年度比+50.2%、過去5年間で年率+24.8%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は19.9%と、前年度の13.4%から改善しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに積極的です。
収益・利益ともに堅調に推移しています。
2020年度はモバイル通信料収入やソリューション収入の増加などにより、全体の売上高はあがっているものの、端末販売収入が減少しました。端末販売収入は、2019年度も前年度比で減少しています。
端末機器販売量の減少には、2019年10月に施行された「電気通信事業法の改正」が影響していると考えられます。
経営者
創業者
稲盛和夫
1932年、鹿児島市に生まれる。1955年鹿児島大学工学部を卒業後、京都の碍子メーカーである松風工業に就職。
1959年4月、知人より出資を得て、資本金300万円で京都セラミック株式会社(現京セラ)を設立。代表取締役社長、代表取締役会長を経て、1997年から取締役名誉会長(2005年からは名誉会長)を務める。
また1984年、電気通信事業の自由化に即応して、第二電電企画株式会社を設立。代表取締役会長に就任。2000年10月、DDI(第二電電)、KDD、IDOの合併によりKDDI株式会社を設立し、取締役名誉会長に就任。2001年6月より最高顧問となる。
稲森氏はたぐいまれな経営手腕と哲学を通じ、産業界のみならず広く市井の人にまで感化を与えた日本を代表する経営者でした。
2022年8月に老衰のため逝去しています。享年90歳でした。
代表取締役社長
髙橋 誠(1961年〜)
高橋氏は横浜国立大学工学部から京セラに入社したという技術畑の出身であり、その後京セラが、現在のKDDIの前身の1つとなる第二電電企画(後の第二電電、DDI)を設立したのに伴ってそちらに出向。5Gのはるか前となる1G、つまり携帯電話の黎明期からこの事業に携わっているのです。
その後2000年に現在のKDDIが誕生すると、高橋氏はモバイルインターネットサービス「EZweb」のビジネス開拓を推し進める立場となり「着うた」などさまざまなコンテンツの開発に従事。
スタートアップ企業の支援やケーブルテレビ大手のジュピターテレコム(現・JCOM)の買収に携わるなど、社内でより幅広い事業を手掛けてきました。その実績が買われて2018年に社長へと就任、現在に至っています。
一連の経歴を振り返ると、高橋氏が携帯電話の黎明期からモバイル通信のネットワークに携わり技術的知見を持ちながらも、それにとどまらない幅広いビジネスの経験があり、なおかつ表舞台に立つ機会も多くメディア対応の経験も豊富であったことが分かります。
2022年の大規模通信障害の際には、その影響範囲が広かったこともあって、KDDIに少なからず批判の声があったのは確かです。一方で、通信障害の最中にある7月3日にKDDIが実施した記者説明会で、代表取締役社長の高橋誠氏が自ら障害の詳細を説明、記者からの質問にも側近らに頼ることなく自ら応対するなどしたことで、逆に高橋氏、ひいてはKDDIの評価が上がったとの声も少なからずありました。
株価推移
KDDIは、浮動株比率が低い(大株主は、京セラやトヨタ自動車等)ため、浮動株ベースで算出される株式指数(インデックス)の時価総額は、通常の株式時価総額と比較して小さくなります。
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