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【企業分析】Skillz Inc.

SKLZ(NYSE)
時価総額:7.2億ドル
株価:1.8ドル
売上高: 9,340万ドル
純利益: ▲1.5億ドル
(2022年)

事業内容: eSportプラットフォーム
設立年: 2012年、2020年上場
本社: 🇺🇸米国カリフォルニア州サンフランシスコ
代表者: Andrew Paradise(Chairman & CEO)、 Ian Lee(CFO)
従業員数: 277人

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概要

Skillzは2012年に設立されたモバイルゲームプラットフォームを提供する会社です。

提供するのは、ユーザーが賞金を賭けて様々なモバイルゲームで競い合うプラットフォーム。ゲーム開発は自社で行わず、外部のデベロッパーが参加する一大エコシステムを築いた。

SkillzもRoblox同様、ゲームを開発しておらず、さらにeスポーツ関連企業でありながら大会を運営もしていません。 シンプルにSDKを提供している会社です。

プロダクト・ビジネスモデル

Skillzはあらゆるスマホゲームを"e-sports化"するプラットフォームを提供している。"e-sport化"によって、スマホゲームのユーザーが現金、仮想通貨、商品券などの賞金・商品をかけた大会や対決をユーザー自身で開催・運営できるようにするのだ。

 日本人にとっては馴染みがないワードかも知れないが、e-sportsとはコンピューターゲームで行われる競技のことであり、格闘ゲームやシューティングゲーム等での大会をイメージしていただけるとわかりやすい。米国では大会のテレビ中継やプロチームが組成されるなど大きな盛り上がりを見せている。

 ちなみに、e-sportsというと、コンソールゲームを対象とした大規模な大会というイメージがあるかもしれないが、Skillzではスマホゲームを中心にインターネット上で大会を開催している。なお、Skillzは自社でゲーム開発は行わず、開発会社からゲームを提供してもらっている。

 ちなみに、Skillzではユーザー数を増やすために、YouTuberに近いモデルが展開されている。具体的には、ユーザー自身が大会を開催、ストリーミングできる環境を整備し、他のユーザーを呼び集める仕組みを構築しているのだ。もちろん視聴数等に応じて大会運営者には報奨が支払われる。

 e-sportsではゲームを楽しむファンをいかに増やすのかという"ファンマネジメント"が重要な要素の1つだが、Skillzはその設計がうまい。日本国内では景品規制に抵触するためにe-sportsがなかなか盛り上がりにくいが、ゲーム企業の中にはSkillzとの連携で新たなファンや収益源を得られる企業もあるかもしれない。

モバイルゲーム業界の現状

 今現在、モバイルゲーム業界で収益を上げるには大きく2つの方法があります。1つは広告、2つめはコンテンツ課金、皆さんご存じですね。(”OLD”と言っているのが挑戦的で良いですね)

1つ目の広告による収益化はユーザーの体験を損ねてしまう事もあり、構造的にユーザーに飽きられやすいゲームになってしまう事が問題です。そのため次々と新しいゲームを開発していかないとゲーム開発者は収益を維持できないという現状があります。
 以下のグラフの通り、単にダウンロードされるだけでは収益化が難しくなってきているという現状もあるので、大変なわけです。

2つ目の収益化パターンは所謂「コンテンツ課金」モデルですが、このモデルで継続的に収益化をする為には延々と新しいコンテンツを作り続ける必要があり、単なるゲーム開発とはまた違った大変さがあったりする訳ですね。例えば卑近な例でいくと、パズドラが延々と新キャラを出し続けているのはこういった背景があるからですね。
 やや挑戦的なプレゼンですが”OLD”なモバイルゲーム業界の課題は次の様に纏められています。

対ユーザー
・コミュニティに入るには課金をする必要があり
・ゲーム楽しみたいのに広告が邪魔になる
対開発者
・競合が多く収益化が大変
・マネタイズを最大化するにはその仕掛けを大量にゲーム内に埋め込まないといけない

ビジネスモデル
 そんな課題を解決する為にでSkillzはこんなビジネスモデルを描いています。

対ユーザー
・「競争」という観点での意味のあるコミュニティ形成を助け
・フェアな競争ができる環境を準備する
対開発者
・Skillzという情報が氾濫していないプラットフォームでゲームを公開させてあげる事で認知を増やし
・然るべきマネタイズの仕組みをSkillzが用意することで開発者が稼げるようにサポートしてあげる
 
 ユーザーが安心してeスポーツ(&課金)に取り組めるように色々な機能が用意されており、トーナメントやリーグ戦を作る様な機能や、ユーザーをレベル分けし適切にマッチングする機能、上級者がチートをしない様に見張る機能など様々な機能が実装されています。

これらはSkillzのデータサイエンスに関するノウハウをベースに開発がなされており、現在でも日々Skillzのプラットフォーム上に蓄積していくデータを元に日々アルゴリズムが磨き上げられているとの事の様です。

Skillzは現在MAUが240万人、Paying MAUが39万人に達している訳ですが、それに追いつくデータを貯めるのはスタートアップにとっては中々困難な道のりですし、この辺りがSkillzの差別化要素の一つになっているのかなと思います。特許もしっかり固められており、58の申請中/申請済の特許群を保有しています。
マネタイズ
 開発者向けにはゲーム開発SDKやサポートなどを提供し、ゲームを開発してもらう訳ですが、そのゲーム上でユーザーにお金を掛けて貰える様にするためにはいくつか制限があります。

1.ギャンブル性が少なく、ユーザーのスキル向上と勝率が比例するようなゲームであること
2.バグを利用した不正な勝ち方ができないゲームであること
3.AppStoreで4つ星以上の評価のゲームであること
4.DAUが100人以上に達しているゲームであること

 上記の明確な基準に沿って運用が行われており、それを満たす場合には以下の様なお金の流れが発生します。

1.ユーザー課金額の16~20%をSkillzが手数料として取る
2.手数料から運営コスト等をSkillzが差し引く
3.残りの手数料を開発者とシェアする。開発者の最終的な取り分は課金額の3~4%

 結果として事業全体で平均14.6%ほどのテイクレートになる様で、粗利自体も95%と高収益なビジネスモデルを作り上げることに成功しています。

また、高収益の秘密の一つとして、SkillzはAppleに30%の手数料を払っていないことが挙げられます。
 ギャンブルアプリについては賭金に当たる部分は手数料徴収から免除するというAppleのポリシーがある様で、ポリシー変更が無い限りは手数料が不要になる様です。いつそのポリシー変更が起きるは分からないことが事業上のリスクの一つですが。
ユーザー層
 ユーザー層がどの様になっているのかも簡単に見てみましょう。年収500万円以下の層が多く、1,000万円以下とするとユーザー層のほとんどをカバーできる形になります。またユーザーとしては女性の方が割合が高いのが特徴の一つでもあります。

年齢別で見るとそこまでの偏りはある様に見えませんね。幅広い世代に利用されていることが見て取れるかと思います。欲を言えばPayingユーザーのデモグラフィーも開示してもらいたいですね。
 ちなみにMAUの推移は以下の様になっています。1年間MAUが横ばいなのは少々気になるポイントですね。

一方でPaying MAUは順調な成長をしており、この伸びが昨年の売上成長のキードライバーとなっています。課金率も2019年Q4の8.8%から2020年Q4には16.2%とほぼ倍増に近い形で成長しています。

2019年はMAUは伸びたもののPaying MAUに上手くコンバートできなかったので、2020年は新規MAUの獲得ではなくそのコンバートに注力していた一年だったのかなと想像しています。

市場動向

ゲーム市場はこの5年間で他のエンタメ産業を上回るスピードで成長をしています。グローバルでゲーム市場は$175Bn(約18兆円)となっており、モバイルゲームに限定しても$86Bn(約9兆円)の市場規模があります。

規模はテレビには負けますが、成長率はゲーム市場で5年平均14%となっています。モバイルゲームに限ると5年平均23%成長と他セグメントを遥かに上回る成長率で成長してきた事が分かります。
 世界のモバイルゲーム市場は今後も成長を続け、2020年から2025年まではCAGR12%で成長を続けると予測さています。

TAM
 Skillzでは現在TAMを$9Bnほどと考えている様ですが、最大$125Bn(+α)までのアップサイドがあると考えている様です。一つずつ読み解いていきたいと思います。

①iOSオンリーからAndroid対応への拡張
 Skillzは現在iOS向けを中心に提供されています。というのはGoogle Play Storeではギャンブルゲームは禁止されており、今のところSkillzがその枠組みに認定されてしまっているためにAndroidではスムーズに展開ができないという背景があるようです。

 一方でSamsung Galaxy StoreからDLしたり、デバイスの設定をユーザー側で変更する事でSkillzのWebサイトからAndroidアプリをDLしたりする方法をユーザー側も見つけつつあるようで徐々にAndroidユーザーも増えています。
 またGoogleもBetting事業の責任者を採用したりとこの領域にも踏み出し始めているので、遠くない将来ギャンブルアプリもGoogle PlayでDLできる様になる可能性もあるのではないかとも思います。そうなると一気にTAMが$9Bnから$15Bnに増加する様です。

②新規コンテンツの開発
 今のガイダンスにはNFLとのコラボ企画の成果などは反映されていません。NFLもそうですし、他のスポーツやその他コンテンツホルダーとのコラボにより新たな収益源を見つけ、それにより開発者やユーザーを引き付け良いサイクルが回っていくことも期待できそうです。

FPSとかがSkillz上で実装されると凄いバズり方するんじゃないかなと思ったりします。お金賭けてFPSやるのは滅茶苦茶にアドレナリンが出そうですね。

③グローバル展開
 現時点でSkillzは米国の約40の州において賭けが許可されています。またグローバルからの売上は全体の10%以下に留まっている様です。
 米国内でもそうですし、海外の欧州や日本、はたまた中国やインドへの展開ができる様になってくると一気に拡大し、最大で$125Bn(約13兆円)のTAMが見込めるとの事です。現在は特にインドを狙っています。

④その他
 現在Paying MAUはMAUの16%ですので、残りの84%はSkillzの売上に一切貢献していない状態です。
 その様なユーザーに対して体験を損なわない範囲での広告を打つことも検討している様で、大きな収益アップは期待できないですが追加で売上を上げるポテンシャルは秘めていることになります。

業績

4-1.GMV/売上
 2019年Q4から2020年Q4にかけてGMVは78%成長、売上は95%成長となっています。足元の業績は文句なしですね。

また同期間の間にテイクレートも13.4%から14.6%に増加しており、収益性がより向上していることが見て取れます。

MAU/Paying MAU
 先ほども触れましたが、2019年にはMAUが増加したもののPaying MAUは増加せず、逆に2020年はMAUは増加していないもののPaying MAUが増加した結果となっています。

このPaying MAUを増やす取り組みが奏功して、2020年は売上が大きく伸びた格好となっています。

マーケティング投資
 Skillzは成長フェーズの企業ですので、マーケティング投資をしてユーザーを獲得していく必要があります。数字を見ている限り、2020年Q2までは粗利分をそのままマーケティング投資投資につぎ込むといった事をやっていた様なのですが、上場が見えた2020年Q3からはマーケティング投資をそれ以上に加速させている事が分かります。

 その中でもどの様な使い道をしているのかを少々見てみましょう。以下のグラフはマーケティング投資の使い道をUser AcquisitionとUser Engagementに分けたグラフです。(Q1とQ2は概算値です)
 User Acquisitionは新規ユーザー獲得、User Engagementは既存ユーザーのリテイン/課金ユーザー化と考えてください。

2020年Q3とQ4の変化が興味深いですね。User Engagementに使用する投資を30%ほど増加させて、逆にUser Acquisitionは投資を抑制しています。
 2020年はMAUが増えないという中で2020年に入ってからUser Acquisitionに投資を大きく増やして来ましたが、どちらかと言うと一度ユーザーを獲得した後のリテンションの方に問題があるのではないかという結論になったのかもしれません。
 確かに一応LTV/CACは3.8倍とユニットエコノミクスは成立してはいますが、2020年にユーザー獲得に投資しすぎたことで少々効率の悪い投資をしてしまっていたのではないかと思います。
 とはいえ一度獲得したユーザーからの収益が伸び続けるのは傾向としてあり、以下のグラフの様にユーザー獲得から3年以上経っても課金額が増加し続ける傾向にあるようです。上達すればお金が稼げるゲームなので、上級者ほど課金を続けるという傾向の様な気がします。

利益水準
 ユーザー獲得にかなりの投資をしているので今の利益水準はあまり重要ではなく、仮に今の数字見るとすると重要なのはユーザー獲得コストを除いた際に黒字化しているのかどうかという点です。
 ユーザー獲得コストを除いた営業利益という数字を便宜的に計算してみるとこんな数字になります。

2020年Q4については上場に伴いなのか、一時的に株式報酬が10億円分ほど増えているので、一時費用としてそれも控除しています
 上のグラフを見ると、2020年Q4はUser Engagementへの投資を増やしたことで利益水準は定価していますが、それでも尚黒字の状態をキープできている事が分かります。
 しっかりとこの辺りはモニタリングしながら、エコノミクスをキープできる様にマーケティング投資がなされている様な印象を受けます。

経営者

SkillzのCEOはAndrew Paradise氏です。彼はいわゆるシリアルアントレプレナーであり、これまでにSkillzを含め5つの会社を創業・経営してきました。最初の会社は失敗して畳むことになったようですが、2010年に創業したAisleBuyerという会社は2012年にIntuitに売却したりと成功した例もったとの事です。

2012年にAisleBuyerをIntuitに売却した後、AisleBuyerに在籍していたCasey ChafkinとLookoutGamingという社名で現在のSkillzを設立しました。

 Skillzは「eスポーツを誰しもが利用できる様に」といった思いで創業された会社ですが、その為にはユーザーに不便が内容な自然な形(邪魔な広告とかではない形)で開発者に利益が流れる様になっている必要があったり、eスポーツを発展させていくには上級者がチート行為をして初心者から賞金を搾取する事が出来ない様になっていたりと色々なハードルがあります。
 
 上記のハードルを乗り越えるためにはプラットフォーム上で稼働するゲームから大量のデータを取得し分析をして最適なアルゴリズムの開発投資をしたり、またユーザーを獲得する為のマーケティング投資なども必要になってくる訳ですが、Paradise氏の複数の創業/経営経験からくる手腕なのか上手く財務規律もコントロールされている様に見受けられます。

今はまだまだユーザー拡大フェーズのSkillzですが、CEO含め経営陣やSPACのスポンサー勢は通常の4倍ほどの期間になる2年間のロックアップ期間を設けており、中長期的な成長に向けてのコミットが伺えると思います。

株価推移

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kabuya66
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