【企業分析】Sentinel One(センチネルワン)
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概要
アメリカのシリコンバレーに本社を置くクラウドベースでエンドポイントセキュリティのプラットホームを提供するSaaS会社です。
エンドポイントとは我々が利用するPCやモバイルのことで、このエンドポイントを侵害するサーバー攻撃に太刀打ちし、保護するのがエンドポイントセキュリティになります。
そしてエンドポイントやネットワーク、クラウドといったセンサーから情報を収集・分析し、今まで見えなかった攻撃を可視化するセキュリティ対策ソフトウェアの総称はXDRと呼ばれ、Sentinel OneはこのXDRを定義し、提供する企業と自ら謳っています。
2013年にイスラエルで設立されました。2021年にニューヨーク証券取引所に上場(銘柄コード:S)しています。
自律的なサイバーセキュリティ防御を可能にする人工知能(AI)拡張検出及び応答(XDR)プラットフォームを開発する。Singularityプラットフォームは、サイバー攻撃から防御する。プラットフォームは、無数の拡大し続ける異種の外部と内部ソースから、ペタバイトの構造化データと非構造化データをリアルタイムで取り込み、相互に関連付け、クエリを実行する。Singularityプラットフォームは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウド等の顧客が選択した環境に導入される。
ウィンドウズ(Windows)、マックオーエス(macOS)、リナックス(Linux)、クバネティス(Kubernetes)全体でのその機能は、異種の情報技術(IT)環境全体での保護、可視性及び制御サービスを提供する。サブスクリプションでプラットフォームを提供する。
サブスクリプション層には、Singularity Core、Singularity Control及びSingularity Completeが含まれる。Singularityプラットフォームは、北米、欧州連合、アジア太平洋地域のアマゾンウェブサービス(AWS)及びAWS GovCloudでホストされる。
プロダクト・ビジネスモデル
現状のレガシープラットホームでは、エンドポイント検出および応答(EDR)が人力によるものとなっており、このアプローチでは、攻撃を検出するために1分、調査するために10分、対応するために60分掛かるという「1-10-60」ルールを広め、 かつては達成可能な最良のサイバーセキュリティと言われていました。
しかし、最近のランサムウェア攻撃は、組織を侵害し、データを盗み出し、完全なシャットダウンを強制するのに数ミリ秒しか掛からないと言われています。 従来の人力によるEDRではサイバー脅威を防ぐのを人間の努力に依存しており、これでは最新の攻撃には耐えられません。
Sentinel Oneは上記の状況を「ナイフを銃撃戦に持ち込むこと」だと一蹴しています。
「1-10-60」ルールを「0-0-0」にすべくクラウドベースで専用AIを活用しリアルタイムで脅威を検知、防御を行えるXDRプラットフォーム「SingularityPlatform」を開発しました。
このプラットフォームは、無数の異なる顧客のデバイスやネットワークといったソースからウイルスやサイバー攻撃に関するデータをリアルタイムで取り込み、相互に関連付け、処理を実行します。
これを行うことで即座にウイルスやサイバー攻撃の情報をセキュリティプラットフォームに反映し、すべての顧客のセキュリティに反映することができ、従来とは違う新しい形のセキュリティプラットホームとなっています。
なお2021年はエンドポイントセキュリティ分野でガートナーのマジック・クアドラントでマーケットリーダーとして認識されています。同じ分野の競合としてはCrowd Strikeが目立ちますね。
Microsoftも入っていますが、エンドポイントのセキュリティって何やっているんでしょうか…
Sentinel OneとCrowd Strikeはエンドポイントセキュリティですが、 SaaSアプリやクラウドへ安全に接続できるようするセキュリティサービスを提供しているセキュリティ企業もあります。
プロダクト
XDRプラットフォーム「SingularityPlatform」
がプロダクトになります。
下の図のようにクラウド上にエンドポイントセキュリティの機能やインシデント対応などのセキュリティオペレーション機能や、各デバイス間の制御といったITオペレーション機能、そして付随するサービス機能が一つのパッケージとなっています。
当然企業はこれらすべてを契約する必要はなく、それぞれ使用したい機能を利用する形を取るSaaS形式となっています。
このあたりはCrowd Strikeとそっくりですね。
このプラットフォームを導入することでの主なメリットは以下が挙げられています。
ビジネスモデル
クラウドサービス企業のため、収益は「SingularityPlatform」に対する顧客からのライセンス料になります。
通常ライセンスは1-3年の契約になるとのこと。
顧客数は80ヵ国以上、4,700社以上で、NRRは124%となっています。そしてこれら顧客のからの満足度は97%となっています。
NRRは(Net Revenue Retention)の略で既存顧客からの売上維持率を意味し、100%を上回っていれば、プラットフォームの追加やライセンス数の増加などで既存顧客からの売上が増えていることになります。
そして2021年度または2021年4月30日に終了した3ヶ月間でSentinel Oneの収益の3%を超える単一の顧客はいなかったということで非常にバランスが取れていると思います。
なお、Crowd Strikeもビジネスモデルは同じで顧客数は11,420でNRRは125%となっています
具体的な顧客は以下がHPに載っていました。
S-1には、Autodesk、Fiverr、NVidia、Wells Fargoなんかも載っていました。
そしてARRが以下になります。
ARRはAnnual Recurring Revenueの略で、毎年決まって得られる1年間分の収益、売上のことです。SaaS企業の重要指標です。
22年1QのARRは$161Millionとなっています。前年同期比+96%です。
一方Crowd StrikeのARRはこちら
22年1Qは$1,194Millionで前年同期比+74%です。
Crowd StrikeがIPOしたのは19年6月で、下表ではFY20年1Qがその時点になりますが、その時点でのARRは$365Millionでしたので、Sentinel Oneよりも大きい規模感でIPOしたことがわかります。
Sentinel OneのARRと同程度だったのはCrowd Strikeにとって3年前ということになりますね。
市場動向
続いてSentinel Oneが事業を展開している市場について見ていきます。
まずセキュリティ業界全体では以下のように今後大きな成長が見込まれています。
さらにランサムウェア(身代金要求型のコンピューターウィルス)による情報機能マヒ事件や、ハッキングによる情報漏洩事件など、インターネットとDX(デジタル・トランスフォーメーション)の進化とともに、情報セキュリティの必要性がますます高まっています。
サイバー犯罪による被害総額は世界全体で約$6trillion(約654兆円)にも上ると言わていますが、サイバーセキュリティ業界の売り上げは、2019年の$156Billion(約17兆円)、2020年には$170billion(約18.5兆円)に増大してはいるものの、比較にならないくらい小規模です。
サイバーセキュリティ業界の売り上げは 急速に拡大しており、2021年には$200Billionに到達し、その後も年率+15%で2027年まで拡大し続けるという予想もされています。
IDCによると、Sentinel Oneのプラットフォームが現時点で対応するアドレス可能な市場は、2024年に$40.2 billion(4.4兆円)に達すると予想され、2021年から2024年間の平均年間成長率(CAGR)は11.9%となっています。
後述しますがSentinel Oneの売上は$93million(約102億円)ですので上記の0.2%ほどとなります。
Sentinel Oneは上記のターゲットとする市場$40.2 billionは以下3つで構成されるとしています。
企業エンドポイントセキュリティは2021年には$9.7 billionの市場であり、2024年には$12.0 billion に成長する見込みです。
デバイスの脆弱性評価などサイバーセキュリティ分析は 2021年には$13.1 billionの市場であり、2024年には $17.1 billionに成長見込みです。
IT運用管理は2021年には$5.9 billionの市場であり、2024年には$11.1 billionに成長見込みとなっています。
以下はCrowd StrikeのTAMになりますが、2023年に$40.2 billionに到達ということで同じような数字です。
業績
続いてSentinel Oneの業績内容について見ていきたいと思います。Sentinel Oneの年度決算少し変わっていて1月〆のようです。
21年1月末までの1年間の売上は$93Million(約102億円)、Net Lossは$116Million(約127億円)の赤字となっています。粗利率は58%です。
前年からの売上成長率は+102%と強力です。
一方21年4月〆の3か月間売上は$37Millionで前年同期比+106%と僅かではありますが成長が加速しています。
Sales and Marketing費用もかなり増えていますが…
一方Crowd Strikeの21年度(21年1月〆)売上は$874Million(約961億円)でNet Lossは$92Million(約101億円)の赤字となっています。 粗利は76%です。
前年からの売上成長率は+82%です。
一方21年4月〆の3か月間売上は$303Millionで前年同期比+70%です。
粗利率についてはCrowd Strikeの圧勝のように見えますが、3年ほど前は57%ほどでした。
ARRについても粗利率についても3年前のCrowd Strikeによく似ています。
Sentinel Oneの営業キャッシュフローはまだマイナスです。(Crowd Strikeはプラスです。)
経営者
Tomer Weingartenは創業者兼CEOである。
創業者兼CEOという肩書きに加え、様々な企業の投資家、アドバイザーとしても活躍している。
ソフトウェア開発者、製品担当副社長、CTOなど、さまざまな肩書きを持つ。SentinelOneの設立に加え、過去に以下2つの会社を共同設立しています。
①dPolls
2006年4月に設立されたdPollsは、意見と投票のためのソーシャルコミュニティサイトです。2006年4月から2007年5月にトルーナ社に買収されるまで、CEOを務めた。
② Carambola Media
2011年に設立されたCarambola Mediaは、出版社がコンテンツのキュレーションを通じてさらなる収入源を得るためのプラットフォームです。2011年5月から2012年5月まで共同創業者兼CTOを務める。