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(企業分析】Sea Limited

SE (NYSE)
時価総額:683億ドル
株価:116ドル
売上高:99.5億ドル
営業利益:▲20億ドル
(2021年)
事業内容:eコマース、エンタメ
設立年:2009年、上場
本社:シンガポール
代表者:Forrest Li (会長兼CEO)
従業員数:33,000人

主要株主

概要

シンガポールの消費者向けインターネット会社である。デジタルエンターテインメント、eコマース、デジタル決済、金融サービスの3つの事業セグメントで事業を展開する。3つの事業が含まれる。

Garenaのプラットフォームは、モバイルおよびパーソナルコンピューター(PC)のオンラインゲームを提供し、グローバル市場向けのモバイルゲームを開発する。eスポーツを提供し、ゲームプレイのライブストリーミング、ユーザーチャット、オンラインフォーラムなど、他のエンターテインメントコンテンツやソーシャル機能へのアクセスを提供する。

Shopeeのプラットフォームは、モバイル中心のソーシャル中心のマーケットプレイスです。統合された支払い、ロジスティクスインフラストラクチャ、および販売者サービスを備えたショッピング環境をユーザーに提供する。

SeaMoneyは、個人や企業に多様な支払いサービスやローンを提供する。また、サードパーティのマーチャントパートナーと統合し、一連の消費ユースケースをカバーする。インドネシア、台湾、ベトナム、タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピンなどで事業を展開する。

業績推移・業界動向 

売上高(セグメント別)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の売上高は43.8億ドルと、前年度比+101.1%、過去5年間で年率+71.8%となった。

セグメント別の売上高は、以下の通り。

・デジタルエンターテインメント:10.2億ドル、前年同期比+167%

・eコマース:11.6億ドル、前年同期比+161%

・デジタル金融サービス:0.9億ドル、前年同期比+659%

・その他:0.1億ドル、前年同期比▲72%

セグメント別の売上高構成比は、eコマースが51%、デジタルエンターテインメントが45%を占める。

地域別の売上高構成比は、東南アジアが64%、その他アジアが15%、ラテンアメリカが18%を占める。

アクティブユーザー数、GMV、決済総額の推移

デジタルエンターテインメントにおいて、アクティブユーザー数は7.25億人(前年同期比+45%)、有料ユーザー数は0.92億人(前年同期比+85%)となった。

eコマースにおいて、GMVは150億ドル(前年同期比+88%)、テイクレートは7.7%。

デジタル金融サービスにおいて、TPVは41億ドル(前年同期比+156%)、テイクレートは2.2%。

利益(セグメント別)の推移

2021Q2の非GAAP EBITDAは▲0.2億ドル(前年同期比赤字転落)となった。

セグメント別の非GAAP EBITDAは、以下の通り。


Seaの主力事業は、主にGarena(ゲームプラットフォーム)、Shopee(モバイルeコマースサービス)、SeaMoney(デジタル決済製品)の3つの柱で構成されている。

1. Garena ゲーミング

Garenaは、Tencent、Nexon、EA Sportsなどの大手企業からゲームのライセンスを取得し、東南アジアに初めて参入したことから始まったゲームビジネスで有名である。Garenaは、東南アジアと台湾のさまざまな国で、ゲーミングプラットフォームGarena +でゲームタイトルを配布している。これには、リーグ・オブ・レジェンド、Heroes of Newerth、FIFAオンライン3、Speed Driftersが含まれている。
Garena +は、オンラインゲームおよびソーシャルプラットフォーム。インスタントメッセージングプラットフォームに似たインターフェイスを備えている。Garena +の機能により、ゲーマー仲間のリストを作成したり、オンラインで友人とチャットしたり、ゲームの進行状況や実績を確認したりできる。ゲーマーは、アバターをカスタマイズしたり、名前を変更したりして、独自のアイデンティティを作成できる。ゲーマーは、グループを形成し、Garena +を介してパブリックまたはプライベートチャネルを通じて複数のゲーマーと同時にチャットすることもでき、Garena +ユーザーは、仮想通貨のシェルを使用する。
Garenaの最初の自社タイトルであるFree Fireは、米国の超人気タイトルFortniteにインスパイアされたマルチプレイヤーバトルロワイヤルゲームである。Free Fireは、2018年にiOSとGoogle Playストアを組み合わせた世界で4番目にダウンロード数の多いゲームだった(PUBG Mobile, Fortnite, and Call of Duty: Mobileに次ぐ)。開発会社Dots Studioが開発し、GarenaがAndroidとiOS向けに公開。2019年11月現在、Free Fireは全世界で10億ドル以上の収益を計上した。
ゲームは、最大50人のプレイヤーが武器や装備品を求めて島にパラシュートから落下し、他のプレイヤーを倒していくというもの。プレイヤーは自由にスタート地点を選び、武器や消耗品を取って戦闘寿命を延ばしていく。
Free Fireのグラフィックは東南アジアの主体である「中・低スペックのスマートフォン」にメリットがある水準に調整されている。Free Fireはパフォーマンスを優先しており、どのようなタイプのデバイスにもフィットできるようになっている。

Garenaの最初の自社開発タイトルであるFree Fireは、米国の超人気タイトルFortniteにインスパイアされたモバイルバトルロワイヤルゲーム。Free Fireは、Free Fireは、2018年にiOSとGoogle Playストアを組み合わせた世界で4番目にダウンロード数の多いゲーム

デジタルエンターテインメント事業であるGarenaは、主にモバイル・PC向けオンラインゲームの提供とグローバル市場向けモバイルゲームの開発を行っている。Newzooとニコニコパートナーズの推計による2019年のオンラインゲーム市場の売上高別シェアでは、当地域で第1位を獲得している。
Garenaは2009年の創業時にデジタルエンターテインメント事業を開始しました。Garenaは、Garenaが開発またはライセンス供与した魅力的でローカライズされたオンラインコンテンツへの簡単なアクセスをユーザーに提供するだけでなく、オンラインおよびオフラインでのエキサイティングなゲーム活動を企画・主催している。Garenaは、ゲーム開発、キュレーション、ローカライズ、運営、配信、収益化、支払い、ユーザーコミュニティの構築やesports活動に注力。また、ゲームプレイのライブストリーミングや、ユーザーチャットやオンラインフォーラムなどのソーシャル機能など、他のエンターテイメントコンテンツへのアクセスも提供している。

1.1 自社開発とサードパーティ

Garenaのゲームは、自社開発のゲームとサードパーティの開発者からライセンスを受けたゲームで構成されている。当社は、バトルロイヤルゲーム、多人数参加型オンラインバトルアリーナ(MOBA)、アクションロールプレイングゲーム(アクションRPG)、多人数参加型オンラインロールプレイングゲーム(MMORPG)、レースゲームやスポーツゲームなど、最も人気のある魅力的なジャンルを網羅した没入型ゲームを提供している。
東南アジア市場では、モバイルゲームが人気を博しており、Garenaのモバイルゲーム事業は、この3年間で急速に成長している。特に、テンセントと共同で開発したモバイルMOBAゲーム「Arena of Valor」は、当社の地域で独占的に運営しており、当社の地域で最も人気のあるゲームの一つ。
2017年12月には、バトルロワイヤルジャンルのモバイルゲーム「Free Fire」を完全自社開発した初のゲームを発売した。Free Fireは、東南アジアや台湾などの従来の市場を超えて、グローバルに成長することを可能にした。現在、130以上の市場でGoogle PlayとiOSのApp Storeで提供されている。App Annieによると、Free Fireは2019年通年で世界的に最もダウンロードされたモバイルゲームであった。発売以来、Free Fireは6000万以上のピークDAUを達成している。今後もゲーム開発能力の拡大を計画している。
上海にあるGarenaのゲーム開発スタジオには現在400人以上の開発者がおり、Free Fireのゲームプレイを強化し、自社開発ゲームのパイプラインを構築することに注力している。2020年1月には、カナダに拠点を置く独立系ゲーム開発スタジオ、Phoenix Labsを買収した。この買収により、ガレナの社内コンテンツ制作能力がさらに強化されることが期待されている。

シンガポールオフィスの風景 Photo by Sea Group Media Resource.

サードパーティのゲーム開発者へのサービスには、ゲームのローンチとホスティング、ローカライズ、マーケティング、配信、収益化、統合された決済インフラ(SeaMoneyプラットフォームへのアクセスを含む)、オンラインおよびオフラインでのコミュニティ構築活動などが含まれる。特に、ライセンスを取得したゲームを各市場に合わせてローカライズしている。
Garenaはゲーム開発者と協力して、ゲームコンテンツを現地の言語に翻訳し、現地の好みに合わせてゲームデザインを修正し、各法域の規制要件を満たすようにしている。

1.2 ユーザー

Garenaのゲームプラットフォームの2019年Q4の四半期間アクティブユーザー(QAU)は3億5470万に達した。大規模なユーザーベースだけでなく、ゲームのチーム性やソーシャル性が、ゲームプレイヤーを飽きさせないだけでなく、強力なネットワーク効果を生み出し、ユーザーをゲームに引き付けることで、競合他社の参入障壁を高めている、とSea Groupの2019年のFORM 20-Fは説明している。

1.3 収益化と決済

Garenaの収益化モデルは、ユーザーが完全に機能的なゲームを無料でダウンロードしてプレイできる「フリーミアム」モデルである。Garenaは主にゲームプレイヤーにゲーム内アイテムを販売することで収益を得ている。これには、機能的または装飾的アイテムのデジタル表現やシーズンパスなどのゲーム内バーチャルアイテムが含まれる。機能的または装飾的アイテムのデジタル表現には、衣類、武器、または装備品が含まれており、プレイヤーはこれらを購入してゲーム環境内で利用することでゲームプレイ体験を向上させることができる。
シーズンパスを購入したプレイヤーは、一定の条件を満たすと、追加のゲーム内バーチャルアイテムを受け取ることができる。ゲーム内アイテムを購入することで、ゲームの進行が早くなったり、ソーシャルな交流が深まったり、より個性的なゲーム体験を楽しむことができるようになる。
ゲーム内アイテムの購入方法には、SeaMoneyプラットフォーム、Google Play StoreおよびiOS App Storeの決済ゲートウェイ、その他のオンライン決済ゲートウェイ、銀行振込、クレジットカード、デビットカード、携帯電話課金、代理店を通じて販売されている当社独自のプリペイドカードを含むプリペイドカードなど、複数の方法が用意されている。

1.4 eスポーツ

Garenaは、年間数百のesportsイベントを開催し、東南アジア、台湾、ブラジルで最大のモバイルゲームプロリーグを運営している。比較的小規模なローカルトーナメントから、人気のあるプロスポーツイベントに匹敵する規模の世界的なesportsイベントまで、規模の大小にかかわらずesports大会を開催している。
ユーザーの中には、トーナメントで賞金を競うフルタイムのプロのesportsアスリートになった人や、プロスポーツのスポンサーでもある大企業のスポンサーになった人もいる。Garenaが主催するトーナメントやリーグには、数万人の観客を収容できるスタジアムサイズの会場で開催されるライブイベントが含まれていることが多い。その結果、当社のesports事業は、ゲームに対するユーザーのエンゲージメントを高め、ユーザーの獲得と維持を促進していると考えている。

2. Shopee eコマース

電子商取引プラットフォームShopeeはGarenaによって2015年にシンガポールで最初に立ち上げられ、その後、マレーシア、タイ、台湾、インドネシア、ベトナム、フィリピン、ブラジルに拡大し、東南アジアと台湾のユーザーにオンラインで製品を売買している。
Shopeeは、最初は主に消費者と消費者(C2C)の市場としてスタートしたが、その後C2CとB2Cの両方のハイブリッドモデルに移行した。Shopeeは東南アジアのインターネット利用方法を意識し、モバイルを重視している。インドネシア人は、中国の電子商取引の消費者と同様に、スマートフォンを介してそうすることに慣れている。
Shopeeプラットフォームは、統合された決済・物流インフラと包括的な販売者サービスを備えた、モバイル中心でソーシャルに焦点を当てたマーケットプレイス。拡張性の高いマーケットプレイスプラットフォームで、ユーザーに便利で安全で信頼できるショッピング環境を提供している。

Shopeeは市場の波に乗り、驚異的な成長を遂げている。2019年末の時点で、アプリは累計2億ダウンロードを記録した。Shopeeの2019年第4四半期の総注文数は、4億4050万になった。流通総額(GMV)も、56億4590万ドル。
フロスト&サリバンによると、Shopeeは2019年、GMVと総注文数で東南アジア地域最大のeコマースプラットフォーム。App Annieによると、Shopeeは2019年に東南アジアと台湾で、Google PlayとiOS App Storeを合わせたショッピングカテゴリーで最もダウンロードされたアプリであった。

Sea Groupは、Shopeeにソーシャルやゲーミフィケーションの要素を多く導入しており、これにより有機的なユーザーの獲得、ユーザーの維持、プラットフォームでのユーザーの滞在時間を増加させることができると説明している。
Shopeeプラットフォーム上でのユーザーエンゲージメントとソーシャル活動を強化する戦略の一環として、当社はShopeeに「Shopeeコイン」、「Shopeeライブ」、「Shopeeゲーム」、「Shopeeフィード」などの革新的なソーシャル機能やゲーミフィケーション機能を多数導入している。これらの機能により、有機的なユーザー獲得を増やすことができると考えている。

ユーザーは、買い物をしたり、ミニゲームをプレイしたり、キャンペーン活動に参加したりすることで「Shopeeコイン」を獲得し、対象となる販売者からの購入費用をShopeeコインで相殺することができる。また、ユーザーは友人を招待して参加することで、さらにShopeeコインを獲得することができ、プラットフォーム上でのソーシャル活動をさらに促進することができると考えている。

同社の発表によるとShopeeは2021年第2四半期においてGoogle Playで最も多くダウンロードされたアプリであり、またGoogle PlayとiOS App Store合わせてでは、ショッピングカテゴリーで世界第2位を達成したとされている。2019年第4四半期からはブラジル、2021年第1四半期にはメキシコと、東南アジア以外の地域にも事業を拡大してきた点もグローバルでの認知度上昇に繋がった事であろう。

【Shopeeは東南アジアで最も訪問者数が多かった】
2020年


【国別の売上高構成割合】


・Shopee Liveでは、携帯電話から販売者のライブストリーミングを視聴することができ、販売者が商品のプロモーションを行ったり、販売やブランド構築のために購入者とリアルタイムで交流することができる。

・Shopee Gamesは、個人またはグループでの報酬を獲得することで、アプリ内でのユーザー同士の交流を促進する様々なミニゲーム。この機能により、ユーザーのエンゲージメント、インタラクションを高める。

・Shopee Feedは、ユーザーがプラットフォームのトレンドや、フォローされている出品者からの新しい在庫、以前に閲覧したカテゴリに基づいて人気のある商品を発見した際に、"いいね!"や "コメント"をすることができる、生き生きとしたマルチメディアのエコシステムを継続的にスクロールすることができる。

ShopeeのUI。携帯電話でのインターネット使用率が高い東南アジアに合わせ、一つのアプリでさまざまな機能が詰め合わされている。

3. SeaMoney 金融事業

Sea Groupは2014年にデジタル金融サービスの提供を開始。2019年第4四半期には、デジタル金融サービス事業の総合ブランドとしてSeaMoneyを導入した。SeaMoneyは現在、電子財布サービス、決済処理、クレジット関連のデジタル金融サービス、その他の金融商品を提供している。これらのサービスや商品は、AirPay、ShopeePay、ShopeePayLater、その他のデジタル金融サービスのブランドで東南アジアのさまざまな市場で提供されている。

2019年を通して、SeaMoneyの効率的な成長を促進し、Shopeeユーザーの決済摩擦を軽減するために、Sea Groupさまざまな市場でSeaMoneyの電子財布サービスとShopeeプラットフォームの統合を進めている。また、SeaMoneyとShopeeのプラットフォーム以外での利用事例を、オンラインおよびオフラインの加盟店に加え、様々なサードパーティの利用事例も含めて拡大してきた。

現在、通信事業者、ゲーム事業者、映画館、遊園地などのオンラインおよびオフラインのエンターテイメントサービス事業者、公共料金サービス事業者、フードデリバリーサービス事業者、クレジットカード発行会社、銀行、保険会社、カーリース会社などの第三者加盟店が対象となっており、これらの第三者加盟店は、当社のプラットフォーム以外のオンラインおよびオフラインの加盟店にも利用されており、また、様々なユースケースがある。
SeaMoneyプラットフォームの加盟店数や種類を増やすことで、より幅広い商品やサービスに対応したモバイル決済ソリューションを提供することが可能となり、ユーザーの日々のニーズに応え、より多くのユーザーを獲得することが可能となる。

また、Shopeeの有機的なユーザー基盤、豊富な高品質データ、プラットフォーム上での強い需要と運営効率を活用して、ShopeePayLaterの下で消費者向けクレジットプログラムを試験的に実施し、与信機能を強化している。

また、Sea Moneyはほぼすべての市場でShopeeに決済処理サービスを提供している。各市場の運営体制によっては、購入者からShopeeギャランティに基づくShopeeアカウントへの支払いや、ShopeeアカウントからShopee販売者アカウントへの支払いなど、Sea Moneyが運営管理する決済処理サービスを提供している場合がある。

3.1 シンガポールのデジタル銀行ライセンスを申請

Seaは、シンガポールでのデジタル銀行ライセンスに申請している。Seaのデジタルバンクは、技術を通じてミレニアル世代と中小企業の満たされていないニーズに対処することに焦点を当てると、声明を出している。Shopeeのユーザーには、SMEとミレニアル世代の消費者が含まれており、デジタル金融サービス部門であるSeaMoneyを通じて、ユーザーベースに金融事業を提供していく考えをもっている。
声明の中でForrest Liは、「Garena、Shopee、SeaMoneyを通じて、この地域のミレニアル世代と中小企業のニーズと要望について、他に類を見ない洞察をもっている」と説明している。他の申請者に対するSeaの主要な利点の1つは、ゲームおよび電子商取引全体でかなりのユーザーベースを保持しており、それを活用してデジタルバンクの顧客を拡大する可能性があることである。

2014年にAirPayとして最初に設立されたSeaMoneyは、AirPay、ShopeePayなどの関連地域で電子財布(eWallet)サービス、支払い処理、マイクロレンディング、および関連するデジタル金融サービスを提供している。そのデジタル金融サービスは、主にタイ、インドネシア、ベトナムに集中している。ShopeePayは、Shopee付属のデジタルウォレット。テンセント支援のSeaの東南アジア版アリペイ(支付宝)である。

「包括的なデジタル銀行」のライセンス取得には、15億シンガポールドル(11億ドル)の総資本を必要とし、その企業はシンガポール人によって運営されなければならない。彼らは、さまざまな金融サービスを提供するだけでなく、小売顧客から預金を受け取ることができる。この認可を取得することができれば、テクノロジー企業は、シンガポールでアリペイのようなサービスを展開することが叶うのである。Bain&Co.、Google、Temasek Holdingsの報告書によると、東南アジアのデジタル貸付市場は2025年までに4倍以上の1,100億ドルに達すると予想されている。仮にアントフィナンシャルや衆安保険のようなビジネスを形成できれば、そのポテンシャルは貸付に限られない。

東南アジアの電子決済の事業環境は中国と似通った点が多いが、e-ウォレットの浸透率という点では未だ成熟期には達しておらず、これからも成長の伸びしろが期待されているようである。下記図では同社のプレゼンスのある国の浸透率を青色バーで表示した。今後東南アジアが中国と同じ道を歩むのであれば確かに伸びしろは大きそうである。

【e-ウォレットの浸透率の各国比較】
(参考)競合他社(インタラクティブ・ホームエンターテイメント)の株式時価総額(2021年6月末)

競争力

ゲーム事業で足場を築く

同社はゲームというアセットライトな事業で地盤を築いた。Sea Limitedのゲーム事業体Garenaは自社で展開するゲームプラットフォームを浸透させるため、東南アジア各地のインターネットカフェやゲームカフェを虱潰しにしていき、欧米や中国のヒット作のディストリビューターの地位を築いた。これは同様のビジネスを中国国内で展開するテンセントの協力が大きい。

CEOのフォレスト・リーは中国本土生まれで、上海交通大学、スタンフォード大学ビジネススクールを卒業し、シンガポールに移住、国籍を替えた経歴。リーとテンセントの間で深い協力関係が構築されていたと考えられる。

Garenaが有力なゲームコンテンツを配信できたのは、テンセントのバックアップが大きい。「League of Legends」、「Arena of Valor」、「Speed Drifters」など、Garenaの最も人気のあるゲームの一部は、テンセントとその関連会社、またはテンセントが所有しているものだ。

Garenaの成長の秘密は、ベトナムの111 Dots Studioが開発し、ガレナがパブリッシュした人気ビデオゲーム『Free Fire』にある。これが同社発の自社開発ゲームとなった。『Free Fire』は、2018年にiOSとGoogle Playストアを組み合わせた世界で4番目にダウンロード数の多いゲーム(PUBG Mobile, Fortnite, and Call of Duty: Mobileに次ぐ)。2019年11月現在、全世界で10億ドル以上の収益を計上している。

最近では、インドで『PUBG』が禁止されたため、その代替として『Free Fire』の人気が高まっているという。つまり、Garenaは巨大市場インドへのチケットを手に入れた。

Free Fireの成功は、ほぼすべてのデバイスでプレイできること(クロスプレイ)に起因している。特に、東南アジアの一部の未発達な地域では普及している傾向のあるローエンドの携帯電話に対応していることだ。これには、インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイなどSea Limitedが事業を展開している地域が含まれる。

中国のテンセント、Sea Limited、アメリカのアクティビジョン・ブリザード(テンセントが大株主)の3社が協力して、東南アジアで『コール オブ デューティ』のモバイルゲームを提供しているのが良い例だ。これにより、ガレナは自社開発ゲームの枠を超えた展開が可能になった。

急激な成長を遂げるEC事業

ゲーム以外にも、Sea LimitedはShopeeプラットフォームを通じたEコマースにも積極的に取り組んでおり、デジタルエンタテインメントを上回るスピードで成長している。2017年のECの収益は4744万ドル。2019年には17倍近くに膨れ上がり、8億2265万ドルに達している。そうは言っても、Sea Limitedにとってeコマースはまだ不採算だ。その最大のライバルであるLazadaのように、競合他社のほとんどは、中国のインターネットの巨人、アリババの支援を受けている。この分野の激烈な競争環境を考えると、Shopeeがいつ黒字になるかは不明である。

Sea Limitedは競合企業から遅れながらも、ECに参入したが、モバイルに焦点を当てたSeaの電子商取引事業体Shopeeはシンガポール、マレーシア、タイで地位を築くと、東南アジアのGDPの40%を占めるインドネシアでも、トコペディア、ラザダ、ブカラパックの先行者に取り付き、アプリのダウンロードベースでは首位に立っている。また、東南アジアと台湾の月間アクティブユーザー数でShopeeが引き続きショッピング部門で1位を獲得している。

Shopeeは中国で流行していることをすべて詰め込んだ造りをしている。アリババとJDの複占だった中国EC市場に突如食い込んだ拼多多のECアプリへのゲーミング機能の追加や、タオバオライブなどが激しい競争を繰り広げるライブストリーミングなどが揃っている。

デジタル金融部門にも良い兆候

Sea Limitedの第三の柱は、デジタル決済とデジタルウォレットを運営する事業体「SeaMoney」を通じたデジタル金融サービスだ。これは、総売上高の0.5%未満を占める、Sea Limited の中では最も小さな部門である。

しかし、まだ導入から日が浅い。このサービスは、Shopeeと統合することで決済処理や電子ウォレットサービスを提供できるという考えで、2019年の第4四半期に導入されたばかりだ。ただ、2020年の第2四半期には、インドネシアにおけるShopeeの総注文の45%以上がモバイルウォレットShopee Payを使って支払われたと同社は報告している。

東南アジアでも中国の先行例をならい、デジタル決済が浸透しつつあり、インドネシアでは、GojekのGo PayとGrabが出資するOvoの決戦が行われていたが、ECという最もデジタル決済と相性のいいプラットフォームを保持するShopee Payが猛烈な勢いで先行勢を追いかけている。

2020年12月に同社はシンガポールでデジタルフルバンクのライセンスを取得しました。また、同社は2021年にインドネシアの銀行を買収しています。これは何を意味するのでしょうか?東南アジアでは銀行口座さえ持てないUnbankedの大人が2億人近くいます。また、銀行口座は持っているけど、ローン、投資、保険などのサービスを受けられないUnderbankedの人はさらに1億人近くいるそうです。こういった銀行のサービスをフルに享受できない人たちに従来の銀行が対応できるのでしょうか?例えばSeaの『デジタルエンターテイメント事業』、『E-コマース事業』、『デジタル金融サービス事業』で得た消費者の行動履歴や決済履歴のデータを活用すれば従来の銀行にフルにアクセスの無い3億人近くある大人の与信を独自に把握することも可能かもしれません。

従来の銀行が手を出せなかったこういった層へのアプローチをデジタルバンクとして開拓していくのでしょう。また銀行のライセンスを得ることにより個人だけではなく、中小企業へのアプローチ拡大も考えられます。人口がどんどん増えて、リアル所得倍増ワールドの新興国市場では少子高齢化デフレマインドmaxJAPANとは異なり中小企業の資金需要も強いので、伸びしろは大きいでしょう。

【東南アジアの7割以上がUnbankedかUnderbanked】
2018 年のデータ
【UnbankedかUnderbankedの大人人口はインドネシアだけでも約1.4億人】

経営者 

フォレスト・リー会長兼最高経営責任者(CEO)は上海交通大学、スタンフォード大学ビジネススクールを卒業し、シンガポールに移住し、シンガポール国籍も取得したシンガポール人である。フォレスト・リー氏はテンセント(以下、騰訊)の最高執行責任者で同社プラットフォーム、コンテンツグループ、インタラクティブエンターとテインメントグループの開発を指揮するYuxin Ren氏と交流が深く、彼もSea Limitedの取締役を勤めている。

また、SEA Limited傘下のShopee CEOはクリス氏という人で、Zalora(シンガポールのファッション特化のECサイト)やLaxada(アリババ系の東南アジア最大級のECプラットフォーム、今ではShopeeの方がシェア高い)のグロースを行ってきた凄腕の経営者です。この3名がSea Limitedのキーマンである。

株価推移

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kabuya66
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