「投資家たちの午後」

12月19日、東京の冬空は薄曇り。仕事の合間にスマートフォンを開くと、日経平均は5日続落。米国株の下落が波及し、リスクオフの動きが市場を支配しているという。

「またかよ……」と、ため息をつきながら、自分のポートフォリオに目をやる。


最初に目に飛び込んできたのはキオクシア。高値掴みをして以来、冷や冷やしながら持ち続けているが、なんとか含み益を保っている。思い返せば、キオクシアを買ったのは、半導体関連が未来を担うと信じてのことだった。だけど、買ったタイミングがあまりにも悪かった。市場が沸騰している中、勢いで掴んだ株は一時的に大きな含み損を抱えた。


「でも、今はプラスだ……まだ持っていていいのか?」

頭をよぎるのは、相場格言の「欲張るな」。利益が出ているうちに売るべきか、それとも信じて握り続けるべきか。スマホ画面の数字がちらつき、迷いは尽きない。


一方、長期保有中のベースフードは今日も続落だ。ヘルスフード市場の未来を見越して購入したものの、ここ数ヶ月はまるで底なし沼のように値を下げ続けている。

「この株、何がしたいん?」

思わず画面に問いかけてしまう。成長性に期待して買ったものの、会社のニュースは少なく、値動きはまるで意思を持たないかのように上下するだけだ。


昼休み、いつもの喫茶店でコーヒーを飲みながら、ニュースアプリを開く。個別銘柄の話題では、BEENOSの買収報道が目を引くが、自分のポートフォリオには関係がない。「持っている銘柄がこういうサプライズニュースに巻き込まれたらな……」と夢想する。


午後の仕事に戻る前、もう一度チャートを確認する。キオクシアは微妙に値を下げているが、まだ含み益の範囲内だ。ベースフードは相変わらずのマイナス。

「焦るな、自分の信念を忘れるな」

そう自分に言い聞かせるが、やはり気持ちは揺れる。


市場の動き、個人の判断、そしてその裏にある感情。投資という「試合」は、今日も続いていく。結果はまだわからない。それでも、次の一手を考えながら、彼は仕事机に戻った。



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