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配当金で安定した収入を得るためのコツとは?運用時の注意点も徹底解説

株式の運用において、リスクを抑えながら安定した収入を得たいと考えている人に向いているのが、株の配当金を目的とした投資です。長期的な株の保有が前提となるため、株の値上がり益を狙った株式売買よりもリスクを抑えた投資ができます。

こちらの記事では、配当金を目的とした株式運用のコツと注意点を解説します。


配当とは利益の一部を株主に還元する仕組み

株の配当とは企業が得た利益の一部分を株主に還元する仕組みです。通常は現金で支払われ、配当金と呼ばれます。

株主が持っている株の数に応じて「一株あたりいくら」という金額を定めて計算するのが一般的です。

このように現金で支払う「現金配当」のほかに「株式配当」という分配方法もあります。新たに自社の株式を発行して株主への配当に当てるのです。

上場企業の8割が配当金を実施80%上市公司派息

2020年12月の時点で、上場企業約3,700社のうちの約3,000社が配当金を出しています。つまり上場企業の約8割が配当金を実施しているのです。

なお2021年6月15日の時点での東証1部における予想平均配当利回りは1.97%となっています。

この数字は銀行の普通預金の金利を大きく上回っています。配当金を目的とした投資は資産運用の有力な選択肢の一つと言っていいでしょう。

配当は年1回もしくは2回が大半

配当は企業の決算時に分配されるのが一般的です。日本の企業の多くは年に1回もしくは2回、配当を行っています。2回の配当がある場合は「中間配当」と呼ばれ、通常の配当のおおよそ半年後の支払いとなるのが通常のケースです。

「中間配当」の他に4半期配当を実施する企業もあります。特別な利益を上げた年や記念の年にイレギュラーで「特別配当」や「記念配当」を設定するケースもあります。

配当金の金額は企業の総合的な判断で決定

配当の金額の算出方法に明確な規定はありません。それぞれの企業が総合的に判断して独自に決定します。

しかし、利益がそのまま配当金に直結するとは限りません。企業の戦略上、事業拡大のために再投資するケースも考えられるからです。

ただし、配当金の金額が企業の業績を示す指標の一つの要素であるのは間違いありません。

定期的に安定した配当を分配する企業は投資家にとっても魅力的な投資対象です。

株式購入時に確認すべき配当の2つの指標

配当を目的として株式を購入する際に参考になるのは「配当利回り」と「配当性向」です。ともに数値化されているため、客観的な基準として利用できます。

配当利回りは株価に対する配当の割合を表しているため、他の銘柄と比較検討する場合の一つの基準となります。

配当性向は企業が利益のうちのどれくらいの割合を配当として株主に還元しているかがわかるので、企業の姿勢や方向性を判断する材料にもなるでしょう。

1.配当利回りは株価に対する利回りを表す指標

配当利回りとは、株価に対してどれくらいの配当をあげているのかという利回りを表す指標のことです。計算式は下記のように表されます。

仮にA社の株価が2,000円であるとしましょう。配当が1株につき60円だった場合には、

配当利回り:60÷2000×100=3%

になります。

B社の株価が500円で配当が20円だった場合は、

配当利回り:20÷500×100=4%

1株あたりの配当金はA社が60円、B社が20円なのでA社が上回っています。

しかし、配当利回りはA社は3%、B社は4%なので、B社の株のほうが好条件の銘柄と言えるのです。

2.配当性向は利益に対する割合を表す指標

配当性向とは企業が利益に対して、どれくらいの配当を株主に分配したかの割合を示す指標のことです。計算式は下記のように表されます。

安定した成長を続けている企業の平均的な配当性向は20%~30%です。急成長中の企業では利益の多くを新たな設備投資に投入するケースも考えられ、配当性向は低くなる傾向があります。

企業が純利益を公開していない場合には配当性向を確認することはできません。

ただし、近年では配当性向を公開する企業も増えているため、わかる場合には株式購入の参考にするといいでしょう。

配当をもらえるタイミングと注意点

配当金を分配するタイミングは企業によって異なります。回数も年1回から2回、さらには4回など、さまざまなケースがあり、株式の購入時期によっては配当金がでない場合もあるので、注意が必要です。

また配当金を受け取るには「権利付最終日」に株式を所有している必要があります。ここでは配当金がもらえる時期と配当金を受け取るための注意点を解説していきます。

配当をもらえるタイミングは6~7月が多い

配当金が年1回分配される場合は、3月末の決算時期から2~3カ月後の受け取りとなるのが一般的です。おおよそ6月~7月頃を想定しておくといいでしょう。

なお決算から配当実施までの流れは下記のとおりです。

  • 企業の期末決算

  • 決算役員会で決議

  • 株主総会で決議

  • 配当実施

年2回の配当がある場合はさらにその半年後となるので、12月~1月頃になります。

権利付最終日までに購入することが必要

株の配当金を得るためには、権利確定日に株を所有していなければなりません。

そのためには、権利確定日の2営業日前の権利付最終日までに株を購入する必要があります。また権利付最終日の翌営業日を権利落ち日と呼びます。

上の図は「権利確定」の流れをカレンダーで表したものです。31日火曜日を権利確定日とした場合、27日が権利付最終日、30日が権利落ち日となり、権利付最終日までに株を購入する必要があります。なお権利確定日は銘柄によって異なります。

配当の3つの受け取り方法について

株の配当の受け取り方には主に3つの方式が使われています。

  1. 株式数比例配分方式(NISA利用には必須)

  2. 登録配当金受領口座方式

  3. 配当金受領証方式

1は証券会社の口座、2は銀行口座に入金されるので、手軽さという点でもおすすめできます。3は郵便局の窓口に出向いての直接の受け取りとなり、本人確認も必要であるため、やや手間がかかります。

それぞれ詳しく解説しましょう。

1.株式数比例配分方式

配当金の受け取りで多くの人が活用している方式です。保有するすべての株の配当金を、それぞれ証券会社の口座で受け取ります。

同じ銘柄を2つ以上の証券会社で持っている場合は比率に応じてそれぞれの指定口座に入金されます。

「特定口座で源泉徴収あり」を選択すると、配当金の利益を株式の譲渡損失とで損益通算できるメリットもあります。

また、NISAでの配当金を受け取る場合には、株式数比例配分方式を選択しなければ配当金の非課税が適用されないため、注意が必要です。

2.登録配当金受領口座方式

複数の証券会社のサービスを利用している場合でも、すべての配当金を単一の口座で受け取り可能なのがこの方式です。

1つの届出で一括して配当金の振込先を指定できるので、銘柄ごとの申込みの手間が省けるメリットがあります。

ただし利用にあたっては本人名義の口座のみ登録可能、ゆうちょ銀行の登録は不可など、いくつかの制限があります。

3.配当金受領証方式

株式を扱っている金融機関から郵送される配当金領収証を郵便局に持参して直に受け取る方式です。配当金領収証の裏面には受領可能な取扱金融機関の名前が記載されています。本人確認の書類が必要になる場合もあるので、確認しましょう。

なお配当金手続きの受け付け期間は決まっているため、配当金領収証が送られてきたら、早めに対応する必要があります。

配当金目的の株銘柄購入の3つのポイント

配当金を目的として株式を購入する場合に確認すべき主なポイントが3つあります。

  • 配当利回りと過去の配当状況

  • 当期純利益など業績

  • 購入するタイミング

配当利回りや配当性向などの客観的な数値の検討とともに、過去の配当状況、購入候補の企業の最近の業績、さらには購入時期など、多角的な視野での検討が求められるのです。ここでは上記の3つのポイントについてさらにくわしく解説します。

1.配当利回りと過去の配当状況を確認

配当を目的として株式を購入する際にまず参考にしたいのが配当利回りです。

2021年6月15日の時点での東証1部における予想平均配当利回りが1.97%なので、2%でほぼ平均値、3%以上ならば、高配当利回りと言えるでしょう。

ただし配当利回りの数値は株価に左右されるので、業績の変動が激しい企業では注意が必要です。近々の配当利回りだけでなく、過去の配当状況も確認することが求められます。

2.当期純利益など業績を確認

株式の銘柄を購入する場合には候補となっている企業の業績の確認も不可欠となります。証券会社サイトを始めとするネットの情報をチェックする方法もあるでしょう。

配当金が目的ということは長期的に株を保有することが前提となるので、株価の安定した銘柄を検討するというやり方もあります。現在の業績が好調であると同時に、将来的にも期待できる分野の企業の株の購入を検討するのがいいでしょう。

3.購入するタイミングを確認

長期的な保有を前提として株式を買う場合でも購入のタイミングを考慮する必要があります。

配当を目的とした株の場合は権利付最終日の直後に株価が下がる傾向があります。配当を受け取る権利を得た直後に売ることを考えている人は少なくないからです。

株価が下がると売手が減り、買手が増える可能性もあるため、実際の値動きを見定めて判断することが必要でしょう。

株の売買のタイミングについては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

配当金の税金で知っておくべき3つのこと

通常、配当金には税金がかかります。しかし、確定申告するかしないかなど、申告の仕方によって税金の金額を少なくできる場合があります。ただし課税所得金額がいくらであるかによって、選択すべき方法が変わるので、丁寧に確認する必要があるのです。

ここでは正しく節税をするために、配当金の税金の仕組みと税金の申告方法について解説していきましょう。

1.配当は税率20.315%で課税

通常、上場株式からの配当金においては、所得税と住民税の源泉徴収が行われた後の金額が支払われることになっています。復興特別所得税を含んだ所得税の源泉徴収の税率は15.315%、住民税は5%です。つまり合計で20.315%、課税がされます。

受け取った時点ですでに税金分が引かれているので、確定申告をせずに納税を完結させることもできます。手続きは簡単ですが、確定申告することによって、税金の金額を減らせる場合があるので、確認する必要があるでしょう。

2.確定申告による配当控除の適用も選択肢に

確定申告の仕方には総合課税と申告分離課税という2つの方法があり、納税者が任意で選択できます。所得税と住民税とで異なった課税方法の選択も可能です。申告の仕方によって税率が変化するので注意しなければなりません。

総合課税を選んで確定申告すると、配当控除の適用を受けることができます。ただし、総合課税は累進税率なので、所得が多くなると税率も高くなり、所得金額によっては税金の額が増えるケースもあるため確認作業が必要です。

3.NISA口座なら非課税

NISA口座を活用することによって、配当で得た利益が非課税となることがあります。NISAとは金融商品への投資に適用される税制優遇制度です。なお、NISA制度は2024年1月より新しい制度がスタートします。詳しい内容は以下の記事をご確認ください。

配当金を目的とした株式投資を検討しよう

株式投資で利益を得る方法は株の売却益だけではありません。

配当金を目的とした株式投資によって長期的に安定して利益を得ることが期待できます。低金利時代が続いており、配当金の利回りは普通預金の金利を大きく上回っています。

配当金を目的とした株式投資は資産運用の有力な選択肢と言えるでしょう。ただし銘柄の選択は慎重にすべきです。

配当利回りや企業の現状と将来性を踏まえ、多角的かつ長期的な視野に立った株式の運用を行っていきましょう。

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