【WSJ有料記事】日本の地銀に変化、ついに投資家に報いる可能性
京都銀は任天堂など地元企業の株式を大量に保有しているPHOTO: BLOOMBERG NEWS
By Jacky Wong
2022 年 5 月 30 日 04:58 JST
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――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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日本の小規模な銀行が投資家に愛されることはこれまでほとんどなかった。だが、バランスシートの改善に向けた緩やかな動きは、状況を一変させる可能性を秘めている。
日本の地銀は投資妙味が薄いように思える。リターンは低迷し、成長というものは存在しない。規模が小さいが故に、日本のメガバンクと互角に戦うことも難しい。これに加え、日本の低金利と高齢化という問題が積み重なる。ファクトセットによると、日本の地銀の株価は2015年以降、およそ半減した。
意外だが、すべてが変わるかもしれない。さえない存在だったこれら地銀がついに株式持ち合いの解消を迫られることで、世界的に「現金が王様」の時代において株主への還元を増やすとみられており、投資家を引き寄せる可能性がある。株式持ち合いは取引関係を維持するために互いに会社の株式を保有し合うという、日本特有の企業文化だ。
独立系アナリストで、投資調査プラットフォーム「スマートカルマ」でリポートを発表するトラビス・ランディ氏は「株式持ち合いの多くが、結束して守りを固めることで安定した票を提供する」と話す。
こうした中、日本の地銀の多くが単に株式持ち合いを続けている。そのため、バランスシートが肥大化し、自己資本利益率(ROE)が低下。株価が簿価を大きく下回る水準で取引される一因となっている。
だが、日本が近年、コーポレートガバナンス(企業統治)の向上を推進したことで、日本企業の間では少なくとも株式持ち合いの一部については解消が進んだ。ここにきて、地銀もこれに従いつつある。京都銀行は先頃、政策保有株について簿価の10%を縮減すると発表した。このような計画を明らかにしたのは初めてだ。持ち株の簿価は時価を大きく下回る。かなり前に現在の水準を大きく下回る価格で取得していたためだ。
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京都銀は地銀の中でも、最も多くの政策保有株を抱えており、その価値は同社の時価総額の約3倍に相当する。ゴールドマン・サックスが分析した。京都銀は数多くの地元企業の株式を大量に保有している。最も知名度が高いのが任天堂だ。任天堂の株式4%だけで、同行の時価総額の約3分の2に相当する。
日本で物言う株主(アクティビスト)の活動が活発になっていることも、京都銀の背中を押した可能性がある。英投資ファンドのシルチェスターは京都銀を含め複数の地銀に対して、特別配当などを通じて株主還元を引き上げるよう求めている。京都銀の取締役会はシルチェスターの提案を拒否したが、シルチェスターが圧力をかけていることは間違いない。
こうした株式持ち合いが急ピッチで解消されると予想することは非現実的だ。だが、緩やかなペースでも正しい方向へ進めば、いずれは投資家にとって成果が実るだろう。
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