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第174回 仕事 ≠ 稼ぐ
諸子百家の「農家」思想には、「全ての国民が自給自足をすれば平等になる」というものがありました。
王侯貴族も農業に従事すれば、民と同じだという訳です。
ところが、全国民が自給自足をすれば、100人の村と同じような状況になってしまいます。
つまり、3000年前は、「合成の誤謬」という考えまでは、まだ発展していなかった訳です。
このことを言い換えれば、「合成の誤謬」を理解できない人は、頭の中が3000年前から止まったままで発展していない人ということになります。
そもそも当時の多くの思想には、商業は泥棒と同じという考えがあり、商人を忌み嫌っていました。
これは、商業は農業と違って、何か新しいものを生み出すことが無いからです。
3000年前の人々には、米や野菜づくりは、無から有を生み出す魔法か何かだと思っていたのでしょう。
ところが、100人の村の話を考えれば、この「農家」思想は間違っていると言い切ることが出来ることは理解いただけたと思います。
平等を実現しても、全ての人々が貧しくなっては意味が無いからです。
富栄えた中で平等を実現してこそ、その平等が意味あるものになるのです。
実はこのことは、現代でも、各所で当たり前のように起こっている愚策です。
例えば、あなたの仕事場を思い出して下さい。
マニュアル化やシステム化は、どこまで進んでいるでしょうか!?
これらは、「合理化」の手段の一つに過ぎないものです。
だから、マニュアル化やシステム化することによって、「合理化」が達成されてしかるべきです。
ところが、そういう意識の無い人たちが多くいます。
マニュアル化やシステム化することが目的となっていて、これらを実施すると勝手に「合理化」できると勘違いしている人たちです。
これは以前にも説明した「手段と目的を勘違いする」、「手段の目的化」などという現象で、「目的」という概念を持たないで行動する人たちに良くあるパターンです。
企業再生に定評のある7593VTHDの高橋社長が言っていた言葉に次のようなものがあります。
- 職場は仕事をしに来るところではなく、稼ぎに来るところだ -
これは日本人に多い「仕事をすれば給料が貰える」という勘違いを端的に表した言葉になります。
多くの人は、「仕事=稼ぐ」ことだと思っています。
しかし、仕事をしていれば、自動的に稼げる訳ではありません。
本来は、「稼ぐための行動」に対して、「仕事」という名称を付けたわけです。
ですから、絶えず「稼ぐ」という目的を意識して、仕事に取り組まなければならないということです。
ですから高橋社長は、社員が仕事をした気になるようなことはさせませんでした。
このため、自動車販売では当たり前だった顧客回りを控えるように指導しています。
- 顧客宅に何十回も足を運んで自動車を買ってもらう -
この行為はある意味、自動車販売会社では美徳みたいに称賛されていました。
特に、この顧客が他社ブランドの愛好家で、それを自社ブランドに変更させたとなれば、社内では拍手ものの功績でした。
しかしそこにある客観的事実は、自動車1台を売っただけです。
店舗にやってきた人に1台売るのと、結果は同じです。
それなのに、何十回も足を運ぶという労力は経費の無駄遣いであり、「稼ぐ」という目的に合致していないという訳です。
ところが、何十回も足を運んでいた営業担当としては、必死で努力した結果です。
単なる無駄遣いと言い切られてしまったら、悲しくなる以前に、反発と怒りの心が沸騰することでしょう。
こうならないためには、先ずは「稼ぐ」ということを真剣に考え、「稼ぐ」ためにはどうするべきかを先入観無しで判断する必要があります。
短期投資では、この「稼ぐ」ことを真剣に考えなければなりません。
なぜなら、短期投資では顧客宅に何十回も足を運ぶような余裕はありません。
その間に、他の営業担当は何十台も売っているようなことになるからです。
つまり「需要」は同じでも、手間を省くことが必要になってくるということです。
短期投資の手間とは何か、不要なものは何かを、しっかりと意識して取捨しなければならないということです。
そして、必要なことに資源を集中させる。
こうして、「需要」を自分にとって確実なものになっている間だけ、投資をするということになります。