第89回 孫子
これを読んで頂いている方は、私から何度も「孫子」の説明を聞いてくれていることでしょう。
- 既に耳タコなんだよ・・・・ -
そうため息をつきながら愚痴っぽく言ってるのが、画面越しに伝わって来そうです。
それでも、全く聞いたことが無い人が一人くらいはいると思うので、その一人の為に今回は説明します。
要らない人は、飛ばしてください。
「孫子」と言うのは、中国の春秋時代の軍略家である「孫武」が著した書物と言われています。
本当に「孫武」が書いたものなのか!?と言われても、誰も確証はありません。
後世の偽作かもしれません。
なんせ「孫武」が生きていたのは、紀元前600年頃から500年頃にかけてです。
紙を実用的なものに改良した「蔡倫」は、紀元後100年前後の人ですから、「孫武」が生きていたのは紙が発明されるより600年以上前ということになります。
ですから、「孫武」の頃は、竹簡や木簡に書いていました。
そんな時代でしたから、この戦い方は今の時代から考えると、非常に大らかで滑稽なものでした。
まず、戦うかどうかは、占いで決めます。
そして戦うとなると、適当な場所に布陣して、敵が来るのを待ちます。
お互いが布陣し終えると、開戦の為の作法があり、それを終えるとやっと戦うというようなことをやっていました。
つまり、奇襲という考えはありません。
そこに合理性や計画性は全くなく、単なる力任せ、行き当たりぱったりという具合だったわけです。
しかしながら、戦いに負けて国が亡ぶと、住民たちは戦勝国に財産を奪われた挙句、奴隷にされてしまいます。
秦の名宰相と言われた百里奚も、元々は敗戦により奴隷となって、秦に送られたのです。
奴隷だったらまだ良い方で、下手をすれば神への生贄にされていました。
第二次世界大戦後、数年間戦勝国の米国に占領された後独立できた日本とは、全く違います。
「必勝を期さなければならない」のが当時の戦争だったのですが、それなのに場当たり的だったことを「孫武」は問題視していた訳です。
「孫武」の出身地は、斉と言われています。
斉は、太公望が与えられた領地で、その子孫に受け継がれた国です。
太公望と言えば能力主義を採用した人として有名で、その考え方は子孫にも引き継がれました。
だから、斉では学問が発達しただけでなく、合理性というものも意識されるようになりました。
斉の名宰相と言えば「管仲」が有名ですが、「管仲」は上級貴族の出身では無かっので、斉で無ければ出世できなかったと言われています。
そんな土壌で「孫武」は育ったのですから、合戦と言うものに合理性を求めようと考えたのも不思議ではありません。
ところが、そんな「孫武」が仕官したのは、出身地の斉ではなく、新興国の呉でした。
これは、いくら実力主義の斉でも、「孫武」の考え方が先進的過ぎて採用されなかったのだと考えられます。
成長し続ける巨大企業であれば、採用するのはある程度の変化(革新性)を持っているだけで良いのです。
既に大企業なので、先進的過ぎるものを採用する、即ち「high risk」を冒す必要が無いからです。
そう言う意味で大企業は、どうしても保守的に傾いてしまいます。
だから、「孫武」は、新興国の中でも、名君の誉れが高かった呉の闔閭に仕えたのだと思われます。
「孫武」は合理性を求めたので、「孫子」は、占いとか、祈りとかを嫌います。
投資をする上で、占ったことはありませんか!?
買った銘柄が値下がりして、祈ったことはありませんか!?
「孫子」は、そのように人間の弱い感情を捨てて、全てを合理的に考えて、「risk management」することを説いています。
つまり、占いや祈り無しに、勝つ方法を教えてくれる訳です。
今の時代でも、宗教に捕まる人は、確率や合理性を意識できない人です。
ある事象(事件・事故)が発生するのは、全て確率で決まります。
その確率を理解し、「risk management」することで、その事象を多くの人は潜り抜けて来ています。
ところが、「risk management」が通用しない、大きな事象も存在します。
そうなると、人は心の安定を求めて、占ったり、祈ったりする訳です。
ただ、その事象が、本当に「risk management」が通用しないほど巨大だったものでしょうか!?
実は、まさか本当に起こるとは思わなかった・・・・。
実は、何とかなると思い込んでた・・・・。
実は、出来るのに、やらなかった・・・・。
そんな理由で、ある事象を具現化させてしまい、何もできずに占いや祈りに逃げたなんてことは、無いでしょうか!?
投資でも、占ったり、祈ったりする人がいますが、全ては無駄な行為だと理解しましょう。
祈るくらいなら、しっかりと「risk management」して、事前、事後の対策をしましょうということです。
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