第88回 PEGレシオ
「PEGレシオ」とは、「Price Earnings Growth」レシオの略で、「PER(株価収益率)」が割安かどうかを測る指標のことです。
この計算式は、下記のとおりになります。
「PEGレシオ」=「PER(倍)」/「1株当たり利益成長率(%)」
「1株当たりの利益成長率」は、「営業利益」、「経常利益」、「純利益」など、好きなのを使って構いません。
なぜなら、必要なのは利益成長率なので、自分の投資法で重要視する利益に沿えば良いのです。
私は、「営業利益」派なので、いつも「営業利益」で計算しています。
「PEGレシオ」は、「PER」を「1株当たり利益成長率」除するので、「PER」が同じであれば、成長率が大きいほど値は小さくなります。
つまり、「PER」が利益成長率によって変化するので、成長企業の割安さを確認するために用いられます。
例えば、前期業績がPER10倍の同業社同士でも、来期予想が大きく成長する見込みの企業は、その分買われて、株価は高くなります。
このような時に、成長率を加味して株価の割安さを比べるために、「PEGレシオ」は用いられます。
通常、「PEGレシオ」の値は、1倍以下を割安と判断します。
実は、この判断基準は、私が四季報の見方で師事する「小泉秀希」さんから教わったものです。
ただ、「小泉秀希」さんは、利益成長率だけでなく、売上げ成長率も加味した方が良いと書かれています。
興味のある方は、ちょっと古い本になりますが、「株の投資大全」を読まれれば良いと思います。
ところで、私は途中から「PEGレシオ」を利用して銘柄を探すことを止めました。
そもそも私が「小泉秀希」さんから教わったのは、20年ほど前です。
当時は、短期投資中心で、長期投資はほとんどやっていませんでした。
長期投資をやってみようと考えて手に取った本が、「小泉秀希」さんの本だったわけです。
今から思えば、創世記の2762三光MFや、4925ハーバー研究所などでは、儲けさせてもらいました。
が・・・・、2006年のライブドアショック以降、成長株が一切買われない状況が続きました。
買われないばかりでなく、成長率関係なしに大きく売られる状況が続いたのです。
上場当時、成長率が20%を超えていた3073DDですら、PER5倍、「PEGレシオ」0.25倍の超割安でも買われなかったのですから、その酷さは想像して頂けると思います。
以降、どうしても「PEGレシオ」を使う気になれず、今に至っているという訳です。
だからと言って、「PEGレシオ」が全く使えないと言うことではありません。
原因は、使える環境と、使えない環境が存在するというだけなのです。
多くの指標に共通して言えるのですが、それは使える時と使えない時の2種類の環境があるということです。
その時とは、厳密にいえば相場環境のことを指しています。
「PEGレシオ」で言えば、景気拡大期には有効な指標でしょう。
景気拡大期と言うことは、多くの企業が業績を拡大させ、成長の道を辿ります。
投資家も、資産が増加して余裕が生まれ、未来の好業績に期待を馳せようとするはずです。
こういう時には、高成長銘柄が好まれるようになり、「PEGレシオ」が有効になる訳です。
ところが、一旦景気が天井を打ち、ジリジリと不景気へと動き出したら、途端に「PEGレシオ」は無視されるようになるでしょう。
なぜなら、不景気になったら、業績の拡大云々より、今の業績を維持することすら難しいと投資かも考え始めるからです。
そこで次回以降は、この使える時、使えない時、つまり相場環境の違いによる「risk」の違いについて「孫子」を使って説明したいと思います。
「孫子」は、「risk management」の最上位の教本です。
「孫子」の抽象的な内容を理解できれば、「risk management」は完全に会得したと言えると思います。
因みに、「risk management」的に言えば、「PEGレシオ」が使われるのは、「PEGレシオ」を使うことで「risk hedge」が出来るからです。
使われないのは、「PEGレシオ」を使っても「risk hedge」が出来ないからです
「risk hedge」出来ないのに、「PEGレシオ」に固執すれば、それは「low risk」を狙いながらも、「high risk」になるということです。